久々の邦画。しかもかなり社会派。
そんな作品のタイトルは「凶悪」、見終えた今の気分は、「最悪」。
タイトルと出演者からして、暗さ満点。
観始めてすぐ、あまりに画面が暗くて、いくら明るくしてもそれ以上明るくならず、シーンを重ねてもずっと暗いので、太陽には申し訳ないけれど、カーテンを閉めた。物理的にも暗い映画なのだ。
お蔭で暗くなった我が家。まだ洗っていない食器が水に浸かっているシンクもアクセントとなり、その演出を手伝っている。
新潮45が実際に取材したノンフィクションを、映画化した作品。
原作は「凶悪-ある死刑囚の告発-」、こちらは未読。実際の事件は「上申書殺人事件」。
新潮45といえば、編集長の中瀬ゆかりさん(作中では村岡希美さんが演じている)。彼女は、わたしが学生の頃、講演に来てくださった。当時わたしはゼミで少年犯罪について研究していて、その時にちょうど、「新潮45が少年法に反して酒鬼薔薇聖斗の顔写真を載せたことについて」ディベートの準備をしていた。当時のわたしには、それに対してのディベートを行うことが負担だったんだろう、そのタイミングで講演にいらしていた中瀬さんに、意見を求めたことがあったっけ。自分のやり方が卑怯だ。あまりにも。
とってもとっても苦しい作品。
最近、心に沁みる洋画ばかりを観ていたせいか、かなりしんどかった。
ストーリーは、編集長の依頼によって死刑囚・ピエール瀧の話を聞くことになった担当記者・山田孝之が、まだ白日のもとにさらされていない事件について打ち明けられ、取材を重ねていく、というもの。
山田孝之が熱心に取材をするシーンがメインだと思っていたけれど、出演頻度とインパクトからして、ピエール瀧主演と言っても過言ではない。暴力の描写が多く、かなり過激。
山田孝之という役者はすごい。正義感ゆえに事件に憑りつかれた記者を見事に演じきっている。しかし家庭を蔑ろにしているというその闇深さもあり、ぴったりな配役。
ピエール瀧とリリー・フランキーは端的に言ってやばい奴をぶれずに演じきっていて、そのあまりの自然さに引いた。ピエール瀧の暴力性と和やかさのギャップ、リリー・フランキーのイカれっぷりはやばい。
山田孝之の妻は池脇千鶴が演じていて、彼女が夫に「私は今生きてるんだよ」と訴えるシーン、認知症の義母との生活に疲れ切っている気持ちを吐露するシーンが印象的でした。事件の取材で彼は追い込まれていた。しかし同様に、妻も追い込まれていた。違った形で、みんな何かに追い込まれている。いずれにしても、放置をすれば膿が出る。
久々に観た、超ヘヴィー級の邦画。
履歴から紹介される作品が、一変した。
- 感想投稿日 : 2020年5月30日
- 読了日 : 2020年5月30日
- 本棚登録日 : 2020年5月30日
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