白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2009年11月28日発売)
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「愛」は真ん中に心があるから真心「恋」は下に心があるから下心、「命」は人は一度は叩かれると書く、などのちまたにあふれるおもしろ話ではない。これは漢字のルーツの真実に迫る本。漢字研究の第一人者、白川静さんから教えを受けた小山鉄郎さんがわかりやすく一字一字取り上げながら漢字学を丁寧に教えてくれる。基本的に漢字はすべて象形文字。例えば「親」という字は、木の上に立って見守るとよく言われるが(白川静さんは「これ一応、理屈におうとる」と笑っておられたそう)、実際は「辛」と「木」と「見」でできた字で、投げ針「辛」で新しく選ばれた「木」でできた位牌を見て拝む字形であったりする。
目次を見ればわかるのだが
【手】をめぐる漢字
【足】をめぐる漢字
【人】をめぐる漢字
【示】をめぐる漢字
など、21項目に分かれていて、漢字というものがいかに体系的につくられているかがわかる。ルーツは神にまつわるものが非常に多く、儀式的なもの、呪術的なもの、霊的なものなどがある。あとは戦や死にまつわるものも多い。読んだことはないが、日本書紀や古事記の世界に触れたような気になった。自分の名前や家族の名前が出てきたときはドキッとした。白川静さんのほんの入門書なのだろうが、この一冊でも充分お腹いっぱいになる。『字統』『字訓』『字通』の三部作はそれぞれ2万円以上する大作らしいが、まだ到底手が出ない。この文庫一冊でも沢山の情報量があり、発見や納得も多いのだが、人にトリビアとして話すのには何度か読み返す必要がある。何千年も前の人々の思いが今もシンボルとして息づいていることがわかり、少し怖い感覚もしたが、最後に俵万智さんが解説していて安心した。
最近漢字検定3級の勉強をなんとなくはじめた母に渡した。2016.1月。

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感想投稿日 : 2016年1月19日
本棚登録日 : 2016年1月12日

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