生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

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  • ダイヤモンド社 (2016年11月26日発売)
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生産性を高めるためのあくなき挑戦。

生産性=アウトプット➗リソース投入、として分母分子それぞれにどう影響を与えていくか。

著者のちきりん、、じゃなかった伊賀さんも強調しているように、生産性ばかり追求していると殺伐とする、というのは大きな誤解だ。無駄なことに多くの時間を費やすから殺伐とするのであって、生産性が高ければその分仕事以外に振り向けられる時間は増えるだろう。

「地方、産業、個人のどれであれ、必要なのは『生産性が低いまま存続できるよう支援すること』ではなく、『生産性を少しでも高められるよう支援すること』です。そしてそのために最も重要なのが、人を諦めない、人に投資し続けるということなのです」(p237)。

彼女のこの真摯な提言も、弱者を切り捨てるな!の合唱の前にかき消されてしまうのか、、、

とは言え現代に生きる我々が、主として金融資本の跋扈によってなにかのっぴきならない焦燥感を味合わされていることもまた事実に思える。
金融的な意味でのリターンもまた一つの生産性だとするならば、たとえば村上春樹のように、そこにどうしても人間にそぐわないなにかを感じる人がいるのは無理もないとも思える。

そう、生産性をめぐる挑戦には、蓄財の衝動と同様に上限がないのだ。
(有能な若手を育てる手段として著者が紙幅を割いている)トップパフォーマーにいかに楽をさせないか、なんて議論も、まあわかる、わかるのだが、私自身の年齢になると辛いと言えば辛い。
おっさんが有能な若手のチャレンジを邪魔するな、はそのとおりだが、その若者が疲弊してしまいそうなら休ませるべきだ。休ませるための見極めのノウハウ、これは本書には積極的には言及のなかったポイントのように思った。

ともあれ、生産性というドライな字面に、著者のいつもながらの厳しさと温かさが同居している素晴らしい本。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営、ビジネス
感想投稿日 : 2021年9月28日
読了日 : 2021年9月28日
本棚登録日 : 2021年9月28日

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