20年以上も前のウクライナにあって、ロシア語で描かれた作品。物語の世界はどんより曇ったように憂鬱、ミステリアスで寓話的。ペットのペンギン(憂鬱症を患っているらしい)の存在が主人公ヴィクトルや読者にとっても救い。 意外に感じたのは、登場人物のフラットな人間関係。『近くの他人』をすんなり受け容れる。これは作者の創作としての主人公の性格か、それともソ連邦崩壊後の不安定なウクライナの政治体制を反映した、この時代独特のものなのだろうか。
言語がその言葉を話す人々の地域性や文化に与える影響は大きいと思う。平和な時代なら、作者がロシア語で本を著す意味はあっただろうに、ウクライナの多様性を壊し民族主義に向かわせたロシア。何とも残念。当時のウクライナの置かれた微妙な立場が透けて感じるような本でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年7月15日
- 読了日 : 2023年7月4日
- 本棚登録日 : 2023年7月2日
みんなの感想をみる