村上かつらは女性なのだろうか?それとも男性なのだろうか?この漫画家を好きな人間が必ず口にする疑問だ。そのくらい、男女のどちらを主人公に据えても驚くべき細やかさで人物の内心を描く。
絵柄は泥臭く、決して上手くもなく一般受けするものではない。しかし日常をひときわ鮮やかに、そして日々の胸の痛みを苦しいまでに浮かび上がらせることのできる力量を持っている。文学的、というのは安っぽい言葉だと思うが、村上かつらの作品にはどうしてもそういう香りを感じてしまう。それはとりもなおさず、言葉の遣い方が巧いということだろう。やはり私が漫画に求めているのはストーリーなのだな、とつくづく実感させられた。
青年誌に掲載された作品なので性描写が多く、不快感を覚える向きもあるかもしれない。そこはすきずきだから仕方がないが、興味を持った人にはまず「村上かつら短編集1」の最後に掲載されているデビュー作、「はるの/よるの/ようだ」を読んでみて欲しい。ラスト1ページまで本当に完成された作品だ。初投稿作品だったそうで、スピ賞の連絡を受けた村上かつらは「こんな地味な作品でデビューしたら未来がない!すぐに受賞を取り消してください!」と思わず口走ったそうだが、いや、この作品ならデビューするだろう……。
しかしこれを読むにつけ、この人は短編や短期集中連載の方が向いているんじゃないかと思った。定期的にテコ入れが入る長期連載だと、村上かつらのよさが損なわれる気がする。勿論、「サユリ1号」も「CUE」も好きな作品ではあるのだが、打ち切りなのが残念。(全二巻)
- 感想投稿日 : 2006年4月10日
- 読了日 : 2006年4月10日
- 本棚登録日 : 2006年4月10日
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