残像に口紅を (中公文庫 つ 6-14)

著者 :
  • 中央公論新社 (1995年4月18日発売)
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感想 : 723
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言葉が消えると、物も消える。

最初に消えたのは「あ」だった。
「あ」が消えると、「朝日新聞」も配達されなくなった。
定食屋からは「からあげ」がなくなっただろうし、
「綾瀬はるか」「芦田愛菜」「阿部寛」なども見れなくなってしまう。
次に「ぱ」が消えたので、「朝」「パン」を食べることができなくなる。

「芦田愛菜」は「愛菜ちゃん」に、「パン」は「トースト」に言い換えればOKだが不便でしょうがない。

「あ」が消えると「ヴァ」や「ふぁ」も消える。
音は全部で152個としてあり、3分の2くらい消えても使える言葉だけでさほど違和感なく読める。
4分の3ほど消えると、さすがに日本語として苦しくなるし、言い換えことばに聞いたことがない表現も増えてくる。

本書は限られた言葉だけで、どこまで表現できるかの実験なので、小説の内容には気持ちが入り込めなかった。

先日の朝日新聞の夕刊に、核をなくすというマンガがあって、セリフに「か」と「く」が使えなくなっていた。
本書と同じような言葉遊び満載の作品は探せば他にもありそうだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説 - 日本
感想投稿日 : 2022年10月21日
読了日 : 2022年10月21日
本棚登録日 : 2022年9月18日

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