1957年に「コールデコット賞」を受賞したという、ユードリイの作品。
保育園に勤めていたときに絵本の楽しさを知り、絵本を書くようになったという作者さんですが、それはとても良く分かります。
子供たちの反応を、日々見て過ごしたのですからね。
でもこの本の良さは、決して教育者の立場にたっていないことです。
ただ素直に、「木はいいなぁ、木があるとこんなにいいことがあるよ」と子供の声でおおらかにうたっている点です。
春・夏・秋・冬と、木が一本あるおかげでどんな暮らしが出来るか、鮮やかな絵とともに見せてくれます。
とりわけ、『木には、みきとえだがある。えだにのぼるととおくのほうがみえるよ。えだにすわって、じっとかんがえることもできる…』というくだりには、新鮮な驚きを感じます。
ああ、そうだ、そう言えばそうだった、と思い出すでしょう。
ケンカして、友だちから姿を隠して物思いにふけっていた、木の上。枝や茂みの陰。
そしてもっと新鮮に感じたのは、『ぼうきれも木からとれる。ぼうきれで、すなにえをかくんだ』というところです。
そんなことは、はるかに忘れ去っていました。
まるで親しい友のように木と過ごしていたのが、今では嘘のようです。
緑が少なくなって、枝を折ろう物ならたちまち叱られてしまう現代。
緑以外の物なら、あふれかえっているのに。
今から50年以上も前に、アメリカで出された本というのもいささか衝撃です。
日本では、なぜこういう本が書かれなかったのでしょうね。当たり前の緑だったからでしょうか。
最後には、「木をうえるといいよ」という文字が現れ、少年が苗木を植える場面が現れます。
ほっとする本なので、ゆっくりと語るように子供に読みたいですね。
- 感想投稿日 : 2010年5月20日
- 読了日 : 2010年4月19日
- 本棚登録日 : 2010年4月19日
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