ごんぎつね (日本の童話名作選)

著者 :
  • 偕成社 (1986年8月30日発売)
4.13
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本棚登録 : 1900
感想 : 187
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彼岸花をどこに見に行こうかと考えていたら、この本を思い出し再々再々、、読。
兵十の母親の葬儀の場面が、殊に好きなのだ。
今では滅多に見られない、野辺送りの場面だ。
咲き乱れる彼岸花の向うに、兵十を先頭にした白い裃姿の行列がみえる。
「ごん」は、手前の六体のお地蔵さんの陰に隠れてそれを見送る。
そうだ、喪服ってもともとは白一色だったんだなぁと、そんなことを思う。

国語の教科書では、今も4年生の教材であるらしい。
当時は、どうして「ごん」を撃ったの?兵十のバカバカ!と泣いたものだった。
それが今読み返すと、「ごん」の哀れさと健気さばかりが際立って、ただただ泣ける。
そして、自分を一番励ましてくれていた「ごん」を、それと知らずに死なせてしまった兵十。
その、言いようのない悔恨と悲しみ。
決して語られることはない孤独を思うと、いたたまれなくなる。

作者の新美南吉さんは、17歳の時にこの作品を執筆したという。
肉親の愛に恵まれなかったという幼年時代を通し、互いに理解しあうことの難しさを心に感じていたのだろうか。
ひとは、こんなに悲しいことも学ばなければ、大人になれないのか。

挿絵は黒井健さんで、色鉛筆を細かく削り、それを油絵具を洗う液に溶かしてから指に巻き付けた柔らかい布にとって塗るという手法らしい。
通常挿絵画家さんと絵本作家さんは、入念に打ち合わせをして完成を目指す。
だが作者は黒井健さんが生まれるより早く亡くなっている。
どれほどの思いでこの絵を描き続けたことだろう。

話では、新美南吉さんの郷里まで出向いて、話の中の風景を丹念に歩いて見て回ったという。
今年も「ごん」が歩いた川沿いに、300万本の彼岸花が咲くのだろうか。
愛知県知多半島は、いつの日かゆっくり旅をしてみたいところだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・秋
感想投稿日 : 2017年9月9日
読了日 : 2017年9月9日
本棚登録日 : 2017年9月9日

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コメント 8件

あいさんのコメント
2017/09/11

こんばんは(^-^)/

ごんぎつねは切なすぎて読み返すのに勇気がいります。
コメント書くだけでウルっときます。
ごんは最後兵十にわかってもらえて嬉しかったのでしょうか。
小学4年生にはまだ重く難しい感じがします。
黒井健さんの絵もいいですよね。ふわっとしています。

nejidonさんのコメント
2017/09/12

けいたんさん、こんにちは♪
コメントありがとうございます!
そうなんですよ、本当に切ない内容だと思います。
楽しいだけの話は忘れるのも早いですが、切ない話は忘れられません。
それは何故かと言うと、ゆっくり時間をかけて切なさの意味を考えるからです。
ああそういうことかと分かるまで、何十年もかかることもあります。
成長とともに、この話も受け止め方が違います。
そこが名作といわれるゆえんだと思います。

ところで「切ない」というのは英訳できないんだそうですよ。
とても悲しいけれどどうすることも出来ないという気持ちです。
「ごん」と兵十は最後のあの瞬間、分かりあえたはずです。
そこが一層切なくて、子どもたちの心に残ることでしょう。それで良いと思います。

5552さんのコメント
2017/09/27

nejidonさん、はじめまして!
5552と言います。
リフォローありがとうございました!

こちらの「ごんぎつね」のレビューを読んで子供の時読んだ時の切ない気持ちを思い出しました。もう何十年も前なのに(笑)
物語の力ってすごいな、と思いました。

倉橋さんはずっと昔に「大人のための残酷童話」を読みました。「聖少女」はブクログでどなたかのレビューを読んで気になって読んでみたいと思ったんですよ。ブクログやってると読みたい本が山のように出てきてしまい、嬉しい悲鳴がでちゃいます(笑)

「セッション」はレンタルはTSUTAYAしかやってないみたいですね。あと「シング・ストリート」とか「ルーム」とか話題になったものが軒並みにTSUTAYAオンリーでGEOユーザーの私は遠くのTSUTAYAで郵送返却で借りました。
結果、うえの三つは「借りて良かったー♪」となりましたが。
「ボーン・コレクター」は原作も気になっているんですが、シリーズが結構続いてて、ハマると他の映画と本が読めなくなるのでは・・・と躊躇しています。
コメントくださった「ウィラード」はパニック描写より主人公の心理描写の方が多くて、今動物パニックものとは違うんだな、と思いました。私はねずみは一匹なら平気なんですが、あんなに大量にいると・・・怖いというより気持ち悪い感じですね。

ブクログを再スタートして一ヶ月ちょっと。
コメントをいただいたのが初めてなのですごく嬉しかったです♪
これからよろしくお願いします!
長文失礼しました。

nejidonさんのコメント
2017/09/27

5552さん、こんにちは♪ コメントありがとうございます!
大好きな「ごんぎつね」にコメントを下さり、二重に嬉しいです。

倉橋さんは「ヴァージニア」から始まり、「夢の浮橋」から始まる
「山田桂子さん」の登場する3部作を、何度読んだことやら。
「大人のための・・」を後年読んだ時は「あれ?そっちに行ったの?」って
取り残された感じがしましたよ。作家さんも変化しますものね。

「セッション」は、見られるまでの大変さもあったのですね。
うーん、これはぜひ見習わねば。どうも何事につけて諦めが早いので・笑
でもいつの日か必ず見たい一本です。
「ボーン・コレクター」の原作は、ものすごく面白くてどんどん読んでしまいますから
心配はいらないと思います。
専門用語が半端なく登場しますが、そこはまぁ飛ばして(一生懸命読んでも分かりませんし)。
映画との違いを見つけるのも楽しいですよ!

ブクログでは、違う分野の面白そうな本に出会えて、そこが楽しいですよね。
自分では読んでいるつもりでも、案外狭い範囲だったんだなと思い知らされたり。
これからも、楽しく&ぼちぼちマイペースで続けてまいります。
こちらこそ、どうぞよろしくです。

夜型さんのコメント
2017/10/01

おはようございます。
ご挨拶が遅くなりました。
先日はリフォローとそれからコメントいただきましてありがとうございました。

ごんぎつねは小生にとっても思い入れ深い作品でした。
小生は小学生の頃に教科書で読んだのですが、ずいぶん義理堅くて人間くさい狐がいたものだと当時は思ったと思います。

著者の新美南吉さん。早くに亡くなられてますが、良い作品を残した作家さんでした。
姉が「てぶくろをかいに」という絵本を小さい頃読んでいたとつい先日電話で話して、ごんのことを懐かしく思いました。
それで返礼に絵本を贈りました。絵柄の可愛らしいいもとようこさんの絵のものにしました。

思い出に残る作品は良いものですね。
物語文を読むことには疎いですが、絵本ってやっぱり良いです。
どうぞよろしくお願いします。

nejidonさんのコメント
2017/10/02

読書猫さん、こんにちは♪コメントありがとうございます。
誰もが知っている作品だけに、受け止め方も千差万別かもしれませんね。
それでもやはり好きな作品なので、載せてみました。お読みいただけて嬉しいです。
いもとようこさんの可愛らしい挿絵のものもありますね。
素敵な贈り物で、私も同じものが欲しかったなぁ・(笑)

実は、読書猫さんの本棚にはつれづれにお邪魔しております。
読んでいて楽しいものですから「ふむふむ、そうそう!」と納得して、
不注意にもそのまま閉じてしまいます。
次回からはしっかりお気に入りをクリックして帰りますね。
こちらこそ、よろしくお願いします。

地球っこさんのコメント
2018/02/16

おはようございます。昨夜はコメントありがとうございました!
『ごんぎつね』は大人になっていくにつれ、ごんから兵十へと視点が変わっていきました。この絵本はちゃんと今も残してあります。久々に読んでみようと思います。
nejidonさんのレビュー『ひとは、こんなに悲しいことも学ばなければ、大人になれないのか。』この一文がとても印象に残りました。

nejidonさんのコメント
2018/02/16

地球っこさん、こんにちは(^^♪
コメントありがとうございます。
先ほど「牧野富太郎さん」の本のレスも拝見しました。
コメントにお返事出来るということに気が付かなくて、初コメをいただいた時は
一年間も放置してしまったワタクシです。(笑)
すぐに理解された地球っこさんはさすがです!

この名作は、読む年齢によって感じ方も違いますね。
親としては、すべての悲しいことや辛いことから子どもを遠ざけてあげたい。
でも現実には無理な話です。
時に、悲しいことや辛いことからも学ぶものがたくさんあります。
本による代体験であっても、子どもたちの心には多くのものが残ると信じます。
地球っこさんもぜひお読みになってみてくださいね。でも泣かないで下さいね。

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