彼岸花をどこに見に行こうかと考えていたら、この本を思い出し再々再々、、読。
兵十の母親の葬儀の場面が、殊に好きなのだ。
今では滅多に見られない、野辺送りの場面だ。
咲き乱れる彼岸花の向うに、兵十を先頭にした白い裃姿の行列がみえる。
「ごん」は、手前の六体のお地蔵さんの陰に隠れてそれを見送る。
そうだ、喪服ってもともとは白一色だったんだなぁと、そんなことを思う。
国語の教科書では、今も4年生の教材であるらしい。
当時は、どうして「ごん」を撃ったの?兵十のバカバカ!と泣いたものだった。
それが今読み返すと、「ごん」の哀れさと健気さばかりが際立って、ただただ泣ける。
そして、自分を一番励ましてくれていた「ごん」を、それと知らずに死なせてしまった兵十。
その、言いようのない悔恨と悲しみ。
決して語られることはない孤独を思うと、いたたまれなくなる。
作者の新美南吉さんは、17歳の時にこの作品を執筆したという。
肉親の愛に恵まれなかったという幼年時代を通し、互いに理解しあうことの難しさを心に感じていたのだろうか。
ひとは、こんなに悲しいことも学ばなければ、大人になれないのか。
挿絵は黒井健さんで、色鉛筆を細かく削り、それを油絵具を洗う液に溶かしてから指に巻き付けた柔らかい布にとって塗るという手法らしい。
通常挿絵画家さんと絵本作家さんは、入念に打ち合わせをして完成を目指す。
だが作者は黒井健さんが生まれるより早く亡くなっている。
どれほどの思いでこの絵を描き続けたことだろう。
話では、新美南吉さんの郷里まで出向いて、話の中の風景を丹念に歩いて見て回ったという。
今年も「ごん」が歩いた川沿いに、300万本の彼岸花が咲くのだろうか。
愛知県知多半島は、いつの日かゆっくり旅をしてみたいところだ。
- 感想投稿日 : 2017年9月9日
- 読了日 : 2017年9月9日
- 本棚登録日 : 2017年9月9日
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