梨木さんの本はこれで三冊目。
まるで壮大なアニメを観るような感覚で読み終えました。
作品の肩書きは「1995年第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作」。
主人公は思春期の少女、照美。
タイトルの「裏庭」とは、照美の家の近所にある、かつて英国人一家の別荘だった洋館の遊び場のこと。
同時に彼女自身の内面をあらわします。
双子の弟「純」を亡くしてから、両親との間の溝を乗り越えられない照美。
友人の祖父から聞いた近所の屋敷の「裏庭」にある日入り込み、不思議な鏡の声を聞いて「裏庭」への長い旅に。
それは照美自身の内面への旅でもあると読者も知らされていくのです。
まるでRPGのような照美の冒険と、「裏庭」に関わる現実の人々との話は並行して進んでいきます。途中に織り込まれる幾多のメッセージが照美を目覚めさせ、読み手の心も大きく揺さぶられます。
一貫して流れるのは「家族の再生」というテーマ。
悲しみにはきちんと向き合って泣かなければならない、大切な家族には「あなたが大切だ」と態度でしめさなければいけない、そんな当たり前の事を知るための、照美の旅の辛さには思わずエールを送りたくなってきます。
家族に対して感じている遠慮や諦め、何となく埋まらない溝。
それらをうやむやにせず言葉で表現する本作品は、特に若い方にお薦め。
当たり前な家族のあり方が出来なくなっている大人にもお薦め。
導入部でワクワクさせ、途中では心のストライクゾーンに何度もヒットを打ち込まれ、最後まで読むと暖かい気持ちになる、さすが梨木さん。
展開のドラマティックさと、色彩感の豊かさとは、アニメ化しても良さそうな気がしますが、読まれた方はどう思われますか?
今日は体調がすぐれなくて寝ていたのですが、そのおかげで本作品を読み終えました。風邪に感謝。
- 感想投稿日 : 2010年2月22日
- 読了日 : 2006年2月23日
- 本棚登録日 : 2006年2月23日
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