図書館で予約した時、私の前に28人の予約者。
メールで連絡が来ても、何のことかすぐに分からないほどの時が経った。
つまり、待ちに待った一冊なのに、この怖さは何?
見てすぐにそれと分かる異常なモチーフが数点。
一度だけチラッと見て、著者の解説を読むときは決して元の絵のページに戻らないよう、それはそれは気を付けながらの読書だった(笑)。
恐怖小説やホラー映画を好んで観る方というのは、脳内変換スイッチがあって恐怖が娯楽に切り替わるに違いない。でもその変換スイッチを所持しない私のようなタイプも相当多いと思われるので、気の弱い方は気を付けてね。
ただ、著者の名文・達文に導かれながら、未知の知識の扉を次々に開けていく展開は素晴らしいのひと言。読まないのはもったいない。
これまで特に恐ろしいとも思わなった作品の中に(また画家もそんなことは目指してないのに)画家の人となりや時代背景、絵の中の小道具の役目などを説明されて慄然とするもの。
更に、前述したように衝撃的なまでの恐ろしい絵。
そういった作品が全部で20点載せられている。
主に16世紀から20世紀の西洋名画。
私は半数の作品しか寡聞にして知らず。皆さんはいくつご存じだろう。
一番最初は、有名なドガの「エトワール、または舞台の踊り子」から。
上演中の舞台に平気で立っている黒服の男、これが踊り子エトワールのパトロンだという。
働く女性は軽蔑され、バレエなど芸術でもなんでもなかった時代だ。
1878年のこの作品から、セクハラ問題を国会で論じる現代まで、一体どれだけ進歩したというのか考え込んでしまう。
とりわけ惹かれたのはクノップスの「見捨てられた街」(1904年、パステル・鉛筆)。
画面の半分以上は曇った空。整然と並ぶ切妻屋根の家々。足元に打ち寄せる波。いつしか海底に沈む運命の、死の街。
何故か脳裏から離れず、気が付くとぼんやり思い浮かべている。甘美な幻想だ。危ない。
後ろにあと10人の予約者が控えている。早く返却しよう。
- 感想投稿日 : 2018年5月16日
- 読了日 : 2018年5月13日
- 本棚登録日 : 2018年5月16日
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