どいかやさんが挿絵を担当されているので、これは読まねばと借りてきた。
本当に良いお話で、アイヌの世界観がこの一冊で理解できる。
タイトルは「暇な小鍋」。小鍋が暇ってどういうこと?と思われたらぜひ。
冒頭アイヌについての解説が2ページ分あり、それがお話のプロローグ。
動植物や自然のみでなく、身の回りのあらゆるモノにも神が宿っているというアイヌの教え。これをおさえないと先へ進まない。
日常使う道具にも神が宿っているとは現代人には考えにくいが、アイヌの人々は道具から手作りだし元の姿も知っている。
言い換えれば、私たちがいかに多くのモノに囲まれて生きているかということ。
モノへの感謝。暇な小鍋はそれを教えてくれる。
わけても熊神様は特に大切にされていた。
この熊神様が好奇心旺盛で、イヨマンテの祭りに格別踊りの上手い若者がいたからと、その正体知りたさに何度も人間界にやって来るという設定。
つまり、何度も射たれに来るのだが・・
熊神を送るイヨマンテの描写が素晴らしい。大勢の人々、たくさんのご馳走。
可愛らしい火の神様、家の中の様子、調度品、アイヌの衣装、若者の踊り。
まるで音楽や歌が聞こえてくるようで、細部まで眺めて飽きない。
どいかやさんは、通常よりも色味を抑えてそれはそれは丁寧に描いている。
最後にはアイヌのお話らしく教訓が入るのだが、それも全然嫌らしさを感じない。
子どもたちに読み聞かせをする際は、決して教えを垂れてはいけないという大原則があるのだが、このお話なら素直に聞いてしまいそうだ。
ひとと生きものと自然と神とが今よりはるかに親しかった頃の、ノスタルジックな民話。
「あとがき」まで含めて、とても心に残るお話。
ゆっくり絵も見せると約20分かかる。中学年から。
- 感想投稿日 : 2019年2月4日
- 読了日 : 2019年2月3日
- 本棚登録日 : 2019年1月30日
みんなの感想をみる