本の時間を届けます

  • 洋泉社 (2016年12月5日発売)
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本棚登録 : 483
感想 : 26
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「本が好き」だから、本に関わる働き方・暮らし方を選んだ人たち。
そんな女性たち10人を紹介した本。
どれもみな主宰者の個人の力を大切にし、地域に根差していてスタートから10年に満たない。
初版が16年12月だから、現在はもっと増えていてほしいな。
書店を開くためのハウツー本ではないが、写真も豊富で本人たちのお薦め本3冊も載っているし、Shop Dataもきっちり掲載されている。
ネット本屋が多い今、貴重な記録だ。そして読むと無性に行きたくなってくる。

標高400メートルの山奥の書店、「古本・お酒・珈琲」の看板がある古本バル。
初心者ふたりで始めた古本屋、月イチ読書会を開く洋館の古書店。
移住した瀬戸内の島で廃屋を改修し、図書館にしたひとも。
元編集者だった人や出版社勤務だったという人もいるが、ほとんどは未経験の方ばかり。
始めるまでにそれぞれ乗り越えてきたものがあり「本」のそのまた先の未来を見つめる視点がある。だから、何かに左右されてしまう不安定さがない。
どの方の言葉にもキラリと輝くものがあり、「好き」を仕事にした喜びを感じる。
嫌なことも当然あるだろうが、それを乗り越える力も本が与えてくれるのが伝わってくる。

「お金を儲けることは大事だけれど、そのために無理をするともっと大事なことを見失う」
「休みが少なくて大変でしょうとか言われますけど、好きなことだから全然平気」
「ひとりになりたいとき、気持ちが弱っているときでも行ける。そんな店になりたい」
「図書館だったら、そこには本を読んでいる人がいて、何となく人がいる安心感をつくれる」

Case9は、震災後に南三陸市で木造校舎をリノベーションして始めた文庫。
Case10は、こちらも震災後の熊本市で移転・新装開店した書店。
このふたつは出色の章で、読みながらいつの間にか涙を流していた。
「いつまで生きるかわからない。だから、やろうと思ったら、やる」
「普通の生活をしていると本を読むのって当たり前のことですけど、実は本を手に取れるというのはすごいことなんだな」
これらの言葉が響かないひとっているんだろうか。
あの震災のあとは読書しようという気持ちさえ生まれなかった。

健康上の不安や金銭的な悩み、あるいは家族と不仲とか仕事がうまくいかないとか、何かしら困っていることがあるかもしれない。
それでも本を手に取って読めるなら、あなたの現在はまんざらじゃない。
むしろ幸せかもしれないのだ。
本が好き、という思いがひとを強くする。新しい仲間を引き寄せる。
5%程度と言われる読書人口だけど、本の力は本当に強い。
それにしても、ここに載っている場所の全部を回りたい!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本にまつわる本
感想投稿日 : 2020年7月7日
読了日 : 2020年7月7日
本棚登録日 : 2020年7月7日

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