エンタメと純文学からそれぞれ50人ずつの作家さんを選出し、掲載されたその作品総数574点。絞る過程で落とされたものも入れると実に700点にものぼるという。
約9か月かけて読了し、評価を百点満点で数値化したのが本書。
そんな無茶な企画なのに、読むと面白い。
面白いから少々困っている。
というのは、これがもろ刃の刃だからだ。
文芸評論家である著者の言葉によれば、文藝に関わる価値の全面崩壊現象をどうしても放置できないからという、いわば義憤にかられた企画であるらしい。
しかし、好きな作家さんの作品が思わぬ低評価だった場合、熱いファンの気持ちは穏やかではないだろうことは容易に察しがつく。
現に、批難ごうごうのコメントもNET上にあり、怒りの矛先が著者に向かっているものも少なからずある。
幸か不幸か私はそこまでの推し作家さんはいない。
その反対に、個人的にかなり低評価の作家さんが驚きの高ポイントで面食らってしまった。
「面白い」と言ったのは、そういった部分も含めての話だ。
だからと言って読みはしない。
無理してまで読むほどのことはない。たかが読書だもの。
プロはそう読むのかと言う程度にとどめて、では自分の価値基準は何だろうと思いめぐらしてみるのがよろしいかと。
本書は、ちょっと変わった読書ガイドという読み方がベストだろう。
作家さんの紹介と作風、評価を載せ、数値にはそれぞれ解説がつく。
90点以上は世界文学の水準で読み得る作品、ということらしい。
では、その高得点の作品を載せてみる。
良かったら参考にしてみてね。
「仮往生伝試文」古井由吉 「ねじまきクロニクル」村上春樹
「わが人生の時の時」石原慎太郎 「抱擁家族」小島信夫
「生ける屍の死」山口雅也 「楡家の人びと」北杜夫
「うるわしき日々」小島信夫 「火山島」金石範
「木の一族」佐伯一麦 「後日の話」河野多恵子
「さようなら、ギャングたち」高橋源一郎 「哲学者の密室」笠井潔
「テニスボーイの憂鬱」村上龍 「波うつ土地」富岡多恵子
・・未読の本が多く、正直載せていて辛くなる選書だ。
そもそも値打ちって何よと言いたくもなるだろう。
著者のコラムによれば「ただ売れるのではなく売れ続けること」「一般読者への訴求力があり、文学的にも質が高いこと」と言う。
時代を超え、世代を超えて残る作品が生まれていくといいよね。
それには、読み手の私たちの眼が肥えていないといけない。
今や忘れ去られた作家さんでも、ベストセラーとは無縁でも、埋もれた名作があるかもしれないのだ。
手に取りやすいハンディタイプの横書き。読んでみてね。
- 感想投稿日 : 2020年11月9日
- 読了日 : 2020年11月9日
- 本棚登録日 : 2020年11月9日
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