鳥が世界中でただ1人、彼の身に降りかかる異常児を巡る運命と信じる悲惨に、人間が元来備えるニヒルで利己的な心情を当人の堕落と衰退にのせて壮大に描いた作品。
自身にとって、前身だろうが後退だろうが、自分を取り囲む欺瞞の罠を掻い潜り、解放しながら受け止めて対処することが生きるということ。
鳥が見舞われていた異常児の問題は、周りの他人たちが共有している時間や運命からは完全に孤立した「個人的な体験」であった。
だからこそ、自身が受け止めて対処することが重要。
「個人的な体験」に情人である火見子が自ら参入し、共通の体験として解決に精進するのは、感慨深かった。
また、突発的に「脆い」という概念の素晴らしさにも気づいた。
今にも崩壊しそうだが、自らの姿形を保つために重力に抗う性質がこの言葉には含まれている。
脆いとは、力に抗う反骨心。脆いとは、攻撃され続けても、それでも尚、立ち続ける反逆精神。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年2月27日
- 読了日 : 2023年2月27日
- 本棚登録日 : 2022年7月10日
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