1500円ぐらいする和風出汁のラーメンみたいな一冊。精巧で緻密、あえてのぼかしが更なる旨味を引き立てる…というか。計算された美味しさ。
江國香織さんってドロドロをサバサバに書くので親しみやすさからか引き込まれるんだけど、表現適切か知らんが文体に「崩し」がある。倒置法とか体言止めとか習ったけど、例えば一文で済む文章を敢えて二文にすることでキャラを強調して引き立てるとか。ふにゃけた口語を持ってくるとか。
「私たちはマンションまで送ってもらった。銀色のムスタングで(79項)」
「健吾は話してくれなかった。かわりにがばりと立ちあがり、焼き肉でも食べに行こう、と言う。それで、そうした(90-91項)」
それが効果的に散りばめられていてずっと飽きずに最後まで行けてしまうので、ある意味とても精巧。高級な腕時計のよう。ラーメンだけどすすすっといけてしまう。300ページあるのに通勤の往復で読めてしまうんだから、そのスキルは、やはり属人的なものなんだと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2018年11月7日
- 読了日 : 2018年11月7日
- 本棚登録日 : 2018年11月7日
みんなの感想をみる