ハチミツとクローバー 9 (クイーンズコミックス)

著者 :
  • 集英社 (2006年7月14日発売)
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本棚登録 : 4468
感想 : 214

「3月のライオン」新刊でハチクロにまさかの再会。しかもそれが、ああみんなうまくいってるんだと思わせてくれるもので、じーんと嬉しかった。それにしてもハチクロの連載中からライオンの方の構想があたためられていて、この9巻の表紙絵が伏線だったとは。思わず全10巻をまた読み返してしまった。

そう思って読むと、表紙絵以外にもちらっと将棋が出てくるし、番外篇に至っては花本先生と真山が徹夜で対局したりしてて、いやあすっかり忘れてました。記憶力と勘のいい人はライオンの連載開始時点でわかっていたんだろうな。

しかしまあ、ハチクロは何度読み返しても最後に泣かされる。途中の展開やギャグ部分のなかには、ついていけないなあと思うところも結構あるのに、そんなことみんなどっかへとんでいって、気持ちを持って行かれてしまう。この漫画には、何か過剰なような、それでいて何か足りないような、不思議なアンバランスさがあると思うのだ。たくさんの人がハチクロについてあれこれ語っているけど、本当に語りたくなる作品だと思う。

描かれる恋愛はどれも片想いで、そこに切なく共感する人は多いだろう。自分も、登場人物たちと同じような年齢の頃読んでいたら、そこに一番目が向いたに違いない。しかし、オバサンも板についてきた年になると(はっ!それってもうバーサン?)、一番しみてくるのは一回きりの若さの輝きだ。

学生時代、そこに行けば誰かしら仲間がいる場所があって、まあたいていはどうでもいいことをしてウダウダしているのだが、時には熱くなったりすることもあって、そして心のどこかでは、これはいずれ失われてしまうのだ、これはごく限られた特別な時間なのだとわかっている、そんな切なさが感じられて胸がいっぱいになってしまう。

自分にとってそうした時代はずいぶん昔で、はぐちゃんたちのように才能があるわけでなし、ビンボーで全然ステキじゃなかったけど、共有できるものはあると思うのだ。ゆるやかな仲間の集まりのなかで、カップルができたり、片思いやら三角関係やらもいろいろあり、当時は当然それが大きく心を占めていたわけだけど、今しみじみと思い返されるのは、そうしてドタバタとすごした「時間」のかけがえのなさだ。ハチクロは私の記憶にきれいな色をつけてくれた。やっぱり漫画ってすごい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2018年12月26日
読了日 : 2018年12月26日
本棚登録日 : 2018年12月26日

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