設定にひねりのあるミステリ。探偵役が解剖学を学ぶアスペルガー症候群の青年なのだ。解説で香山リカさんが書いているとおり、現在では専門家はアスペルガーというくくり方はしないようだが、やはりこのとらえ方にはインパクトがあり、また、なるほどと腑に落ちる所もある。その「普通ではない」感覚の持ち主である主人公が、共感を誘うように描かれていて、知らず知らず肩入れして読み進めていくことになる所が、うまいなあと思った。
決して爽やかな読み心地ではない。どうしても周囲と軋轢を生じてしまう主人公パトリックの孤独や、その母の苦悩がえぐり出すように書かれる。また、犯罪の舞台となる病棟で、昏睡状態にある患者の絶望的な苦しみには、暗澹とした気持ちになる。パトリックが真相を見いだす殺人以外にも、複数の殺人(あるいは未遂)があることが示される。その一つはかなり衝撃的だ。
ちょっと盛り込みすぎのような気もするが、読みごたえがあった。パトリックが、人の気持ちというものは学んでいけるのだと思うようになるのが、何よりの救い。ごく普通の人たちである、周囲の若者たちの描き方も良かった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2014年9月11日
- 読了日 : 2014年9月11日
- 本棚登録日 : 2014年9月11日
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