ラバーネッカー (小学館文庫 ハ 8-4)

  • 小学館 (2014年6月6日発売)
3.84
  • (2)
  • (23)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 75
感想 : 18
4

設定にひねりのあるミステリ。探偵役が解剖学を学ぶアスペルガー症候群の青年なのだ。解説で香山リカさんが書いているとおり、現在では専門家はアスペルガーというくくり方はしないようだが、やはりこのとらえ方にはインパクトがあり、また、なるほどと腑に落ちる所もある。その「普通ではない」感覚の持ち主である主人公が、共感を誘うように描かれていて、知らず知らず肩入れして読み進めていくことになる所が、うまいなあと思った。

決して爽やかな読み心地ではない。どうしても周囲と軋轢を生じてしまう主人公パトリックの孤独や、その母の苦悩がえぐり出すように書かれる。また、犯罪の舞台となる病棟で、昏睡状態にある患者の絶望的な苦しみには、暗澹とした気持ちになる。パトリックが真相を見いだす殺人以外にも、複数の殺人(あるいは未遂)があることが示される。その一つはかなり衝撃的だ。

ちょっと盛り込みすぎのような気もするが、読みごたえがあった。パトリックが、人の気持ちというものは学んでいけるのだと思うようになるのが、何よりの救い。ごく普通の人たちである、周囲の若者たちの描き方も良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ミステリ
感想投稿日 : 2014年9月11日
読了日 : 2014年9月11日
本棚登録日 : 2014年9月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする