マツ★キヨ: 「ヘンな人」で生きる技術 (新潮文庫 い 75-7)

  • 新潮社 (2014年4月28日発売)
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なんだかすごい売れっ子になっちゃってびっくりのマツコさんと、「環境問題のウソ」以来発言を注目している池田先生の対談。池田先生も結構テレビに出てるとは知らなかったわ。これは面白そうという予想通り、いやそれ以上に読みごたえがあった。

「マイノリティとして生きること」について、卓見がいろいろ語られる。うなずけることが多い。そうだよね~~と思った箇所のいくつかを抜粋しておくことにしよう。

池田「とても早い段階で自分というものを固めてしまって、あとはインターネットで情報を引っ張り出してくることしかやらなくなったら、自分が変わらなくなるでしょう」「いまの人は『自分』を変えようとしないんだよ。いまの人って、自分がいて、相手がいて、その間で情報のやり取りをすることだけがコミュニケーションだとおもってるんだな」「やり取りをすることによって自分や相手が変わることが本来のコミュニケーションなんだよ」

池田「よく『好きなことを仕事にした人は幸せです』とか言う人がいるけど、違うよな」
マツコ「絶対に違う。『anan』なんかでそういうふうに書いてあるのは大ウソよ」「仕事が楽しいわけがないのよ」「仕事はね、疲れるものなのよ!」「『好きを仕事にする』なんて、あんなクソみたいなスローガンはいったい誰が考えたんだ!? そんなの、ウソ、ウソ」

池田「マイノリティの人の言ってることって、かなりの確率でマジョリティが言ってることよりもおもしろい場合が多いよね。差別されている人は、差別している人よりもセンシティブだから、おもしろいことが言える。ただ、そこで、ほんとうは自分がメジャーになりたいという思いがあったりすると、メジャーな人に嫉妬する心理が強く働くから、自分もまたマイノリティを差別するというような行動につながっていってしまうんだね」

マツコ「そもそもね、アタシは、自分のことを『どうせ理解されない』と思ってるんですよ。だから、理解してほしい、あるいは理解されるのが当然だと思っちゃってる人の言動を見ていると、こっぱずかしいものを覚えてしまう」「もう諦めるしかないと思ってる。むしろ、一生『反体制』でいてやる、みたいな感じだね。『石投げるんなら投げてみろよ、この野郎』という喧嘩腰なのよ」

池田「『自分たちが特別で、他の人は凡庸』というかたちでやった運動というのは、だいたいがうまくいかない。日本共産党が伸びないというのもそこにあるんだよね。自分たちだけが特別で、『いつも正しい』と言ってるでしょう。『自分たちはマイナーだけど、特別だし、正しい』というかまえからは、生産的な話は出てこないね」

マツコ「『ゲイの気持ちを理解してほしい』とか訴えてる人に、アタシはよく、『じゃあ、あんたはヘテロセクシャルの人の気持ちの何がわかってるの?』と言うの」
池田「別に他人の気持ちなんかわからなくたって付き合えるし。気持ちがわからなくたって、こうするのがいいのかなと思うことがあったら、それはやればいいというだけの話でしょう」

いやごもっとも。お二人の話には、自分を大きく、良く見せようとか、取り繕おうとか、そういうさもしいところがまったくなくて清々しかった。それにしても、こういう「異物」も「おもしろいキャラ」として消費していこうとするマスコミって、そら恐ろしいものだなあとあらためて思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 対談・インタビュー
感想投稿日 : 2015年6月25日
読了日 : 2015年6月25日
本棚登録日 : 2015年6月25日

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