臓器売買や人身売買が「してはいけないこと」だというのははっきりしている。それは売り買いすべきものではないと圧倒的多数の人が思うだろう。じゃあ、お金を払って行列の先頭に行かせてもらうのはどうか?病院で優先的に診察してもらうのは?高速道路でスピード違反する権利を買うのはどうなのか?これらはいずれも他国で実際に売買されているのだそうだ。もしかしたらもう日本でもあるのかも。
本書はこのような実例を次々と挙げて、何が問題なのかを考えていこうとしている。結論から言うと、市場主義が入り込むべきでないところに進出していくと、それ自身やそれを支える社会的な規範の価値を、低級な基準で査定することによって貶め、尊厳を傷つける、ということになるのだろうか。
あげられる例が豊富で驚かされるものもあり、その点では面白いのだが、繰り返しが多くくどい感じのするのが残念。もっとコンパクトにまとめてあったらなと思う。
世の中のあらゆるものが市場の商品として取引される社会に私たちは生きている。市場を本来あるべき所に押し戻すことはかなり難しいことのように思われる。それでも「それはお金で買うものではないでしょう」という声はあげていかなくちゃ、と思う。「命名権」というものを初めて聞いたときのなんとも言えない違和感を忘れないようにしたい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
社会・文化評論
- 感想投稿日 : 2012年9月2日
- 読了日 : 2012年9月2日
- 本棚登録日 : 2012年9月2日
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