岡嶋二人、2冊目。前に読んだかどうかも忘れているが、多分これは初読み。
3億2千万円の2歳馬(今でいう1歳)が輸送中の事故で骨折し、共有する他の馬主にそれを隠すために、馬の誘拐事件をでっちあげる。
20世紀にセリで3億円以上した高馬というとサンゼウス(3億6050万円)を思い出すが、サンゼウスは1988年生まれなのでこの本が書かれたよりもずっと後。
時代的にイメージに近い馬というと1979年生まれのハギノカムイオーだけども、カムイオーは1億8500万円だもんな。まあ、いいけど。
どんな計画かも知らされていないながら、こちらも主人公になった感じで読み進め、警察の捜査に加えて謎のスカGの女が絡んで、結構キリキリする展開。
馬の誘拐というとシャーガー事件(1983年2月)を思い出すが、馬を誘拐してもレースに出したり種付けしたり出来るわけでもないし、飼っておくだけでも大変だし、あまりメリットはなさそうな。
まあ、本作は狂言だからあまり関係ないけど。
それにしてもこの本が書かれた頃は丁度私が本格的に馬券を買い始めた頃だが、青色のゲートなんて懐かしいね。東京に右回りのレースがあったことは知らなかった。
ユニット馬券やオッズ表示のことなど今から考えると隔世の感だが、それをうまいことトリックに利用していて、、、このトリックを見て、この本を読んだことあるのに気がついた…。
私の記憶には、このトリックと該当のレースが終わった後の寒々しい競馬場の風景しか残っていなかったのだが、一頭の馬に対する多くの人の思惑が二重三重に蠢いて事件を形作っていたことが明らかになる作りこそが、本作の値打ちだったのを改めて思い知った。
- 感想投稿日 : 2020年12月12日
- 読了日 : 2020年12月11日
- 本棚登録日 : 2020年12月12日
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