黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年4月13日発売)
3.79
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本棚登録 : 6257
感想 : 523
5

理瀬シリーズ4作目に入る。「麦の海に沈む果実」に続く理瀬が主人公の長編。

高校生になった理瀬が、亡くなった祖母の遺言に従い、祖母が遺した洋館で二人の叔母と一緒に暮らすことになる。
祖母が亡くなった時の不自然な状況、奇妙な遺言、得体の知れない二人の叔母、同級生の弟の警告、謎の『ジュピター』、猫の毒殺、二階に住む妖精、悪意に満ちた封筒、級友の失踪…。
曰くつきの館に染み込んだ謀略と欺瞞の血が呼ぶ疑心暗鬼に、この作者らしいワールドが全開。
これだけでも十分楽しめるが、同級生の雅雪との交流に大人びた理瀬とは別の彼女の一面を見ることが出来ていい感じ(丘の上の公園での会話の切ない感じが好きですね)。
理瀬だけでなく朋子も加えて、この年頃の女の子が持つ罪作りなところがよく表現されていて、それがまた話の顛末にも結びついているところにも感心。
大団円と思われた後のひと悶着もオマケの楽しみ。余韻を残したラストにまだまだ続く物語を思う。

それでは「薔薇のなかの蛇」が文庫になって出てくるのを待つとする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年読んだ本
感想投稿日 : 2021年10月9日
読了日 : 2021年10月8日
本棚登録日 : 2021年10月9日

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