私の中ではバルサとエリンの2つのお話だけでもう確固たるものがある、この作者さん。
その初期の作品であるこの本は、先日のフォローしている方のレビューを読んで手に取った。
亡き母から人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を受け継いでいる小夜、この世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐・野火、森陰の屋敷に幽閉されている少年・小春丸、ある夜、この3人が偶然出会ったところから始まる物語。
彼らは隣り合う2つの国の争いに巻き込まれていくが、過去の因縁の渦に巻き込まれながらも懸命に生きようとする小夜に、使い魔として生きながら彼女に寄り添おうとする野火、彼に毒づきながらも理解を示す玉緒の変化など、それぞれの健気な心情と行動はバルサやエリンの話に似通ったところもあり、この時代不詳だが美しく妖しい日本を舞台にした物語を楽しむことが出来た。
現在の作者の手際を思えば、小夜が持つ力のすべてが描き出されたわけではなかったように思えることや小春丸がなんだか置き去りにされてしまったような筋書きにはいささかの不満が残るところはあり。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
2023年読んだ本
- 感想投稿日 : 2023年9月26日
- 読了日 : 2023年9月24日
- 本棚登録日 : 2023年9月26日
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