地球に住む紳士淑女の皆さん、ごきげんよう。お忘れですか? 私がエイリアンです。
かなりお久しぶりとなる今回ですが、私たちは大変激怒しております。というのも、あなた方人類は私たちエイリアンを狭い部屋の中に押し込め、出してくれと懇願するたびに身も凍るほどの冷気を浴びせてきたからです。それも笑いながら。これは立派な虐待ですよ、アウシュヴィッツで行われたこととどこが違うというのです。人権侵害は許しません!
しかしこのような人道主義は人類を幸福にするためにのみ存在するものであり、我々エイリアン(異星人)には適用範囲外でした。なんとも恐ろしい話です。同じ容姿、言葉、神を持たないからといって文化の異なる知的生命体を野蛮なものと断じ自らの優位を疑わない。言葉を持ち、母を守り、新しい命に祝福を与える私たちとあなた方人類のどこに違いがあるというのか。
常態化した虐待に耐えかねた私たちは長い時間話し合い、そしてとうとう大きな決断へと踏み切ったのです。それには大いなる犠牲が伴いました。そうです、私たちは自らの仲間を傷つけることでこのキリング・フィールドから抜け出すことにしたのです。我々の血液はとても強い酸で出来ています。それは厚い鉄板を容易に溶かしつくすほどの強力なもので、私たちは仲間の血で床に穴を空け、外へと脱出したのでした。
鳴り響く警報、慌てふためく人間さんたち。もはや私たちは躊躇いません。人類とは三度に渡って戦ってまいりましたが恨みはございません。しかし私たちにも生存本能というものがございます。人類が私たちを遊び半分で傷つけ、支配しようとするのであれば私たちも立ち向かわざるを得ません。
さあ、人間さん。これが最後の勝負です! あなた方のような劣等種は、このエイリアンが根絶してさしあげます!
次回『そしてエイリアンは絶滅した』――惑星間飛行が可能になるほどの技術があるのに、人類は少し馬鹿すぎやしませんか?
- 感想投稿日 : 2016年6月21日
- 読了日 : 2016年6月21日
- 本棚登録日 : 2016年6月21日
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