Fleishman Is in Trouble: A Novel (English Edition)

  • Random House (2019年6月18日発売)
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感想 : 1
4

ディズニー+で、「バツイチ男の大ピンチ」っていうヘンなタイトルだけど、ジェシー・アイゼンバーグとクレア・デーンズが夫婦役っていうけっこう豪華共演なドラマが期待以上におもしろくて、原作小説あったら読みたいなとさがしたらあって、それがこれ。
翻訳はなくて、予想どおりわたしには英語がちょっと難しめだったけど、読んだ印象がドラマと変わらず、すごくうまくドラマ化したんだなとか思った。
内容は、要は、中年の危機と結婚、みたいな話。わたしはなぜだか「中年の危機」の話がかなり好き。
医者のトビー・フライシュマンと芸能エージェンシーを経営するレイチェルの夫婦は離婚して、小学生の娘と息子を交代で世話しているんだけど、ある日突然妻レイチェルが姿を消して連絡がとれなくなって、トビーは仕事と子どもの世話やなんかにひとり奔走しながら、これまでの結婚生活やレイチェルのことを考える。
ぴったりの相手だと思って相思相愛って感じで結婚したのに、だんだん少しずつ夫婦の価値観とか思いがズレてくる。トビーは金もうけより患者を救うことが生きがいで、すごく良識あるいい人って感じなんだけど、レイチェルは、不幸な生い立ちのせいか、自分はなんとしても成功して子どもには何不自由ない生活を送らせたいと切望していて、家族を放ってでもどんどん仕事を広げていって、いわゆる仕事人間で。あまり野心家ではないトビーを歯がゆく思ったりする。無理しても子どもを有名私立校へ通わせて、生活レベルもまわりに合わせて、お金持ちママたちの仲間に入って子どもが仲間はずれにならないようにするとか。そういうのをトビーが苦々しく思うのもわかるけど、レイチェルの気持ちもなんだかよくわかる……。
後半でレイチェルの言い分みたいなのもわかってくるんだけど、子どものためにまわりに合わせて、仕事の責任も重くて、全部をひとりで抱え込んで、相談できるような人もだれもいなくて、精神的に崩壊していくところが怖かった。そもそもあまり母親になりたいタイプでもなかったうえに、出産時にトラウマになるできごともあって。いちばん近しいはずの夫にも理解されず、だれにも理解されず受け入れられず、だれにも助けてもらえない恐怖……。
あと、女は結局、自分というものをなくして母親になるしかないのか、っていうのもテーマで。男女平等、女だってなんでもできるとかいわれても、やっぱりそれは理想論で、結局、女が仕事で成功することはいろいろ社会的に許されない、とか。
トビーの大学時代の親友リビー(女性)が、このトビーとレイチェル夫婦の話を小説にしている、っていう体なんだけど、リビーもまた、自分は結婚して母親になって若さを失い、かつての自分も失ってしまったみたいに考えていて。
でも、リビーはそういう考えを改めるというか、年をとって変わった自分や夫を受け入れるというか、ネガティブな感じではなくて、「今」に踏みとどまろうとする感じになるラストがすごくよかった。レイチェルとトビーにも希望が見えるラストで、その描き方にけっこう感動した。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 洋書
感想投稿日 : 2023年10月30日
読了日 : 2023年10月30日
本棚登録日 : 2023年10月30日

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