かたばみ (角川書店単行本)

著者 :
  • KADOKAWA (2023年8月4日発売)
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本棚登録 : 99
感想 : 6
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木内昇さんの著書は何冊か読んでいて(本棚内検索したら5冊読んでた)すごく好きなものもあったけど、最近はあまり読んでいなくて、でもこの本は23年のベストにやたら出てくるので読んでみようと。確かに、文章うまいのでするする読めるし、ユーモアもあっておもしろく、悪い人が出てこなくてすがすがしい。けど、まあ予想してたとおり、っていう感じもあったかな、戦中から戦後のホームドラマっていう感じで、「朝ドラ」にできそうな。
でも、ひとくちに戦中戦後とか言って、知識としてはどんな世の中だったかって知っているような気になっているけど、表面的なことじゃなくて、ごく普通の人たちの本当の暮らしが感覚的にわかるようだったのがよかった。例えば、戦中食料不足がひどかったのは知ってるけど、戦後もすぐに改善されたわけじゃなくて、だから数年たっても子どもが食べものに執着するとか、また食べものがなくなるんじゃないかと怯えているとか、なんか、ああ確かにそうだろうなあとか思った。何度も私は感想に書いてる気がするけど、戦争終わってすぐ戦後、高度成長期がきたわけじゃない、とか。ほかにも自分では知ってるつもりになっていても全然わかっていないことばっかりなんだろうな、と。
あと、主人公の夫になる権蔵のキャラクターがよかった。とにかくひ弱で、戦争に行っていない引け目とかいろいろあって、最初は人生を投げているダメ男みたいなところからだんだん変わっていくんだけど、人生投げていたからこその人格というか、かえって余裕やゆとりがあるような感じがよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月3日
読了日 : 2024年1月3日
本棚登録日 : 2024年1月3日

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