起こった事実のみ書けば、エゲツない話なんだけど、書き方一つで、こんなにも美しい物語に変わる。昔読んだ、小池真理子『無伴奏』や倉橋由美子『聖少女』同様の衝撃を受けた。
幼い頃からどこか城の一室に幽閉されるような状態で育った盲目の少女レイア。母は覚えてない頃に死に、彼女を褒め讃える優しい父はいるものの、一方で身の回りの世話をする侍女ダフネは彼女に冷たく「死ねばいい」と言う。
しかし、レイアの描写する日常を読んでいくと、父は車で出かけていくし、父が買い与えてくれる本やCDなど、さほど昔ではない現代だということが読む方にもわかってくる。
で、途中でネタばらしがあり、それがいわゆる衝撃的ではあるのかもしれない(そういう紹介で私自身も当作を読んでみたいと思った)。
が、この作品の本当の面白さはそのネタが割れた後にあるのではないかと思った。彼女にとっての「真実」は後に知らされた現実なのか…それとも。最後の章、「ムーンレイカー」にうまく書かれていたと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2017年5月28日
- 読了日 : 2017年5月28日
- 本棚登録日 : 2017年5月28日
みんなの感想をみる