感動する! 数学 (PHP文庫)

著者 :
  • PHP研究所 (2009年11月2日発売)
3.43
  • (16)
  • (54)
  • (53)
  • (18)
  • (3)
本棚登録 : 590
感想 : 55
5

美を支配する「黄金比」
 (略)
 文学的・心理的に「美」の問題を扱えば、
 このような主観的な「美」が全面に出てくる
 ことが多いでしょう。しかし、こと数学の
 世界では、とらえがたい「美」の基準についても、
 ちゃんといくつかの理論を持っているのです。
 その最たるものが、「黄金分割」といわれる
 比率の存在です。つまり、この世のものとは
 思えない美しさを持つものがあり、それらには、
 ちゃんと一つの共通点があるということが
 わかっているのです。それは「黄金比」という、
 この世でもっとも美しいとされる比率のことです。
 発祥は定かではありませんが、紀元前古代
 ギリシャのピタゴラス学派が起源ともいわれており、
 「黄金」という言葉が使われるようになったのは、
 十九世紀に入ってからではないかとされています。
 (略)
 黄金比 1:1.618・・・≒5:8
 (略)
 ルーブル美術館が所蔵している「ミロのヴィーナス」は、
 足下からおへそまでの長さと、頭頂までの長さの関係が
 やはり5対8の黄金比率で、腕などの細かい部分にまで
 黄金比が隠されています。そのバランスよく整った
 美しさに、どれほど多くの人が感嘆の声をあげたこと
 でしょうか。
 また自然界にも美しい黄金比は存在しています。
 オウム貝が描くらせんやヒマワリの種の配列、
 そしてマツボックリやツクシなど、数多くの
 黄金比を見ることができます。
 (略)
 なんとオウム貝の渦巻きを五00万倍に拡大すると、
 ハリケーンの渦巻き雲になり、さらにこれを六0兆倍
 すると渦巻き星雲の形にぴったり一致するといいます。

・ 詩人でなければ数学者にはなれない。
・ 数学の美というのは「朽ちることのない永遠の心理」。

・ 数学の謎と宇宙の謎はリンクする
  宇宙の始まりは素粒子。
  素粒子論では、物質は触れられるものの世界から
  どんどん細かい原子へと、原子は素粒子へと、
  というのがこの物質世界の論理です。これは実は
  宇宙論とも結びついています。
  アインシュタインの相対性理論によって、宇宙は
  もともととても小さなものが爆発して、こんなに
  大きくなったということがわかっています。
  ということは最初、この宇宙の始まりに素粒子
  ほどの大きさの時代があったということです。
  それは今から百三十七億年前のことです。
  宇宙の年齢は百三十七億年と判明しました。
  もっとも百三十七億年という時間も、数学の
  世界から見ると大した数とはいえません。
  数学の世界は無限を相手にしているからです。
  百三十七億年前の大きさは、どのくらいでしょうか。
  「スーパーストリングセオリー」(超弦理論)によると、
  それは10のマイナス33乗センチメートルです。
  百三十七億年前に10のマイナス33乗センチメートル
  の宇宙があったわけです。10のマイナス33乗
  センチメートルとは、いったいどんな大きさなのか、
  人間の想像を絶する小ささとしか、言いようが
  ありません。
  (略)
  結局、具象のフィールドにあるはずの物理学も
  突き詰めていくと数の世界、触れる世界では
  ないところまでいってしまい、抽象の世界へ
  入っていくのです。
  宇宙を前にして、物理学はその法則を説明する
  ときに、量に対して数が対応することで数学が
  必要となってきたのです。
  また、物理学の「不確定性原理」は、ある側面を
  ずっと見ていくと、もう一つの側面がぼやけて
  くるというものです。つまり、実体というのは
  非常に多面的で二重構造を持っているというもので、
  ある意味、自然の本性でもあるともいえます。
  そして、このリアルワールドの背後にイマジナリー
  ワールドがあるということもまた、量子力学、
  数学でみごとに表現されるのです。
  しかも、ここでもまた大活躍するのがオイラーの
  公式です。オイラーのこの美しい公式は、
  われわれの存在の根源を支えてくれています。

花に潜む森羅万象
  なぜ人は花を美しいと思うのでしょうか? 
  花が私たちと同じようにいきているからでしょうか。
  私たちが宇宙の法則をすり込まれているように、
  花もまたその法則に従って生きているという、
  その命の在り方を無意識のうちに感じてしまうから
  なのかもしれません。
  生きているものはらせんを描くと述べました。
  花や葉っぱもそうです。たとえば、真夏に咲き誇る
  ヒマワリを見ると、らせんを描いて種(頭花)をつけて
  いきます。それは約137.5度の黄金角(360度を
  黄金分割した角度)で、正確に種をつけていきます。
  一つがついて、その約137.5度ところに次の
  ものがつき、そして数千個の種(頭花)をつけます。
  そうしていくと最後には、最高の密度にバランスよく
  つくことになります。
  このそれぞれのらせんを90度内側と比較したときの
  直径の比率は、前述したように約1.618(黄金比)
  になります。ヒマワリは本当に「黄金」の花なのです。
  また、葉っぱのつき方もらせんを描くと述べましたが、
  それは1,2,3,5,8と成長していきます。
  それを葉序といいますが、これもフィボナッチ数列と
  なっています。葉序はもちろん、太陽の光をバランス
  よく、効率よく受けるためにらせんについているのですが、
  自然の摂理とらせんの理論がぴったりと重なり合う
  という、不思議な現象です。森羅万象のいたるところに、
  このらせんと黄金比は見ることができます。
  それは、もはや偶然とはいえない現象だと思わずには
  いられません。

  脳細胞も、きわめて精緻な宇宙の法則によって
  働いているのですから、脳が生み出す言葉というのは、
  当然そこから滲み出てくるものです。とすると、必然的に
  その言葉と、その宇宙の真実は、人間を介して
  つながっているのではないでしょうか。
  もちろんこえrは誰も確認したことがない仮説ですが、
  そう理解するしかないような場面に遭遇することが
  あります。
  つまり、人間の脳は非常に精緻に、文学や芸術など
  言葉にできないようなスピリチュアルな世界とつながっていて、
  それを感じ取って脳の知られざる場所に情報が
  伝わることで、やがて言葉や芸術という、目に見える
  世界に表現されているのではないか、という考えかたです。


読後の感想  
 到る所で感動した。
 ただ、オイラーの公式とか、全く理解出来ないので、
 その感動もまだまだレベルのとっても低い感動ということは
 自覚している。
 とにかく、数学の世界がこんなにも色鮮やかな世界だった
 ということを知って、自分なりに数学の世界に入って
 いくことを決意した。


 
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 数学
感想投稿日 : 2011年12月28日
読了日 : 2011年12月28日
本棚登録日 : 2011年12月28日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする