論文の書き方 (岩波新書 青版 341)

著者 :
  • 岩波書店 (1959年3月17日発売)
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本棚登録 : 1195
感想 : 88
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文章の書き方指南本で、名著としてしばしばあげられる一冊。

「小さい魔物である」と熱く語られる「が」に関しては、あまり意識したことはなかったが、いわれてみれば確かにそうだ。

「が」の前後で反対の意味のこともあれば、並列だったりもする。「殆ど無数の意味がある」のである。

著者流の書き方に、おおむね異論はないのだが、「『無駄な穴埋めの言葉」を大いに使おう」は、使わない派の谷崎潤一郎に賛成。

接続詞を多用する文章は、書き手の考え方が整理されていなかったり、文章の並びがおかしかったりするものだ。

時折挟まれる論評や小ネタが案外面白い。例えば、「日本語の発音やアクセントが広汎な問題になり始めたのも、ラジオの出現を俟ってのことであった」。確かに標準語が何なのか、ラジオ以前の人々は意識しなかったのかもしれない。

黎明期のテレビも、「言葉がフルに働かなくても、万事は映像が負担してくれる。言葉は隠居することができる」と鋭く分析している。

手に取ったのは何と100刷(2020年9月)だ。1959年の初版と60年以上前の本ながら、現代人にも読まれる分かりやすい文章・文体のおかげだろう。書き方本の面目躍如。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノウハウ
感想投稿日 : 2021年6月1日
読了日 : 2021年5月30日
本棚登録日 : 2021年5月30日

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