文章の書き方指南本で、名著としてしばしばあげられる一冊。
「小さい魔物である」と熱く語られる「が」に関しては、あまり意識したことはなかったが、いわれてみれば確かにそうだ。
「が」の前後で反対の意味のこともあれば、並列だったりもする。「殆ど無数の意味がある」のである。
著者流の書き方に、おおむね異論はないのだが、「『無駄な穴埋めの言葉」を大いに使おう」は、使わない派の谷崎潤一郎に賛成。
接続詞を多用する文章は、書き手の考え方が整理されていなかったり、文章の並びがおかしかったりするものだ。
時折挟まれる論評や小ネタが案外面白い。例えば、「日本語の発音やアクセントが広汎な問題になり始めたのも、ラジオの出現を俟ってのことであった」。確かに標準語が何なのか、ラジオ以前の人々は意識しなかったのかもしれない。
黎明期のテレビも、「言葉がフルに働かなくても、万事は映像が負担してくれる。言葉は隠居することができる」と鋭く分析している。
手に取ったのは何と100刷(2020年9月)だ。1959年の初版と60年以上前の本ながら、現代人にも読まれる分かりやすい文章・文体のおかげだろう。書き方本の面目躍如。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノウハウ
- 感想投稿日 : 2021年6月1日
- 読了日 : 2021年5月30日
- 本棚登録日 : 2021年5月30日
みんなの感想をみる