駆ける少年 (文春文庫 さ 21-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (1995年5月1日発売)
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本棚登録 : 247
感想 : 20
4

ニュースを見て、そういえば高校生の頃に何冊か読んだなぁと思い出し
図書館で借りてきて読んでみました。
最初の20〜30ページくらいは
あんまりよくないかなぁと思って読んでたのですが
途中から小説の世界と自分の世界が少しずつ馴染んできて
最後には面白く読めました。
面白くって表現は内容的にちょっと適当じゃないかもだけど。
3編の小説が入っているのですが
「駆ける少年」と「痩せた背中」はとてもよかったです。
「駆ける少年」は焦燥感を
「痩せた背中」は愛情を
それぞれに扱った話。
昨日の日記で書いた「感情のポケット」の中には
「駆ける少年」の冒頭の部分の少年の感情に近いものもあるなと。
この少年はどこに・何に向かって走っているのかは
本人もよくわかってないんだけど
ただ向こうに行かなくてはならないと焦っていて
同じような気持ちを高校生・大学生の時は僕も常に感じていた。
それはゆったりとスローペースに生きている今にはなくて
でも、もしかしたら僕の中に隠れているだけでなくなったわけではなくて
それらが時々、疼いているのかもしれないと思った。
それを求める気持ちがどこかにあるのかもしれない。
でも、それを持ち続けたらこの登場人物のようになっちゃうのかなぁ。
足早に駆け抜ける人生もかっこいいけど
それだけじゃないとも今は思える。
「痩せた背中」は女癖の悪い父親とその恋人のような存在と主人公の話。
父親が女癖が悪くて家にも夜遅くまで帰ってこなくて
それをじっと耐えていた恋人(しかもかなりの年齢差)が
精神を壊してしまうんだけど
そうなる前に出て行けばいいのになぜそうしなかったのか?
それは主人公には何かを諦めたように見えたのだけど
本当は単に好きな気持ちを諦めきれなかったんじゃないか?
と気づいたというお話。
自分が壊れても気持ちを全うすることができる強さ・弱さの両方が
今の僕にはないもののような気がして
その激しさが羨ましいような懐かしいような感じがした。
当時の僕にあって今の僕にはないものと
今の僕にあって当時の僕にはないものと
その優劣というのはたぶんないんだけど
年齢を重ねるごとにそういう気持ちが失われていくのだと思うと
なんだか喪失感を感じて悲しくなった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2004年10月18日
読了日 : 2004年10月18日
本棚登録日 : 2004年10月18日

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