獣の奏者 II 王獣編

著者 :
  • 講談社 (2006年11月21日発売)
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本棚登録 : 3104
感想 : 361
5

これはものすごい傑作なんじゃないでしょうか。多分この先何十年も色あせずに読み継がれていく。同時代に産まれたことを幸運に思います。万歳。
上橋菜穂子さんの作品なら「面白くて当たり前」くらいな気持ちがあるけど、期待を上回っていて。

想像力をかきたてられる王獣や闘蛇の描写、厚みのある世界観、登場人物たちの複雑な心の動き、躍動感のあるストーリー。
本の世界にどっぷり入り込めるしあわせ。これぞ読書の醍醐味。

そして、主人公。天真爛漫な美少女でもなく、無敵の魔法を使うわけでもなく、実は王家の継承者なわけでもなく、伝説の少女でもなく、最初はただの傷ついた娘にすぎない。
苛酷な運命に放り込まれ、癒えない傷を背負い、迷いながら、それでも逃げずに己の頭で考え、己の手を動かし、己の足で一歩ずつ人生を歩んでいく。
だからいい。彼女が信じたかったものに、物語はどんな答えを出すのか、わたしたちは固唾を飲んで見守る。彼女の信じたかったものを、わたしたちも信じたいと願いながら。

生きることは甘くない。優しさと純粋さだけでは何も救えない。それでもきれいごとを言えるのは強さだ。
いやほんと、最後のシーンは胸が熱くなりましたよ・・・。まさか泣くとは。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・児童書
感想投稿日 : 2012年6月27日
読了日 : 2007年5月28日
本棚登録日 : 2012年6月27日

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