青の時代 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1971年7月27日発売)
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本棚登録 : 1894
感想 : 153
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他者不信と独自の自尊心をもった東大生の川崎誠。
合理主義を崇拝し大学で数量刑法学を研究する傍ら、銀座で高利ヤミ金を主催する。目的も動機もない生の軌跡のなかに戦後青年の実像を描くというあらすじ。戦後に起きた「光クラブ事件」の山崎晃嗣をモデルにした小説。

しかし、これがそれほど・・。
戦後青年の実像を描くのなら、前半の生い立ちと父との関係の描写は主題と矛盾する。逆に後半の合理主義と高利貸しの描写で戦後日本の実像を浮き彫りにするのなら、前半の彼の人格形成過程はテーマとずれる。著者も認めているように本作は失敗作だったようだ。
でも、個々の描写で良いなぁと思う箇所は多々ある。前半の一校時代の友人・愛宕との出会い。実はこの小説で最も読み応えあるのが誠の生い立ちである前半部。あるいは借金の取り立てで相手の身包みまで巻き上げるヤミ金社員たちの豪胆さ。主題だのなんだのを気にしなければ楽しめる。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年11月18日
本棚登録日 : 2021年5月3日

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