愛情を示さない両親に従順に従って生きる主人公「イク」の、幼児時代から初老に近づくまでの日々を、8つの章に分けて描く。普通には幸福な家庭と言えないが、そばにはいつも犬や猫がいて、イクを支えてくれた。いや、犬や猫ばかりではでなく、多くの人たちが人生の道々でイクを応援してくれた。怒りっぽい父は、ソ連での捕虜の辛酸な経験が彼の人生を変えたようだし、変わり者の母にも母の事情と人生があった。でも両親も、物語を構成する多くの人物や犬猫も、イクの人生を肯定しているようだ。『すべてのものごとは、各人の胸に据えられた鏡にどう映るかなのである』という著者の多様性を容認する姿勢が気持ちよい。イクは作者姫野氏自身を描いているようだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文芸小説(国内)
- 感想投稿日 : 2017年8月25日
- 読了日 : 2017年8月25日
- 本棚登録日 : 2017年8月25日
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