三流シェフ

著者 :
  • 幻冬舎 (2022年12月14日発売)
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フランス料理界で「それ以上望むべくもない成功を収めた」三國シェフが、猪突猛進、ガムシャラに料理界を駆け上った自らの半生を格好よく綴った自伝。特技は誰とでもすぐ仲良しになれること。「不可能を可能にするのが、ぼくの人生の目標」!

超貧しくて、ろくに小学校にも行かず働き詰め自給自足生活を送った少年時代(「時代は昭和でも、暮らしは江戸時代と大差なかった」)、住み込みの丁稚奉公から札幌「グランドホテルのコックになって、日本一のハンバーグを作る」と一念発起、ホテルに突撃して強引な鍋洗い戦法で存在感を示していった青年期、ジュネーブで大使専属の料理人となるチャンスを得てとにかくガムシャラに働き、その後スイスやフランスの一流レストランを渡り歩いてメキメキと腕を上げたヨーロッパ修行時代、日本に帰国して「オテル・ドゥ・ミクニ」を開業し世界的な大成功を収める成熟期。著者の波瀾万丈の半生が一気呵成に語られる。

読んでいてずっとワクワクしどおしだった。裸一貫、本人の実力と才覚だけで少ないチャンスをものにしてのしあがっていく物語は、どうしてこうも読者を魅了するんだろう。「苦労する覚悟さえあれば、どこかに居場所は見つかる。見つけた場所で、一所懸命にやれば道は開ける。ほんとに開けるとは限らないけど。自分にそれしかやれることがないなら、楽観的にやり続けるしかないと思っている」!

「シェフは新しい価値の創造者であり芸術家でなければならないのだ」という言葉も格好いい。

「オテル・ドゥ・ミクニ」、一度行ってみたかったなあ(本書でせっかく店の存在を知ったのに、もう閉店してしまってるとは…、残念)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伝記・史伝・自伝
感想投稿日 : 2024年2月26日
読了日 : 2024年2月26日
本棚登録日 : 2024年2月25日

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