三流シェフ

著者 :
  • 幻冬舎
4.18
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本棚登録 : 768
感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344040649

作品紹介・あらすじ

雑用こそ人生の突破口だ。
誰より苦労しても、その苦労を見ている人は1%にも満たない。
それでも“世界のミクニ”は必死に鍋を磨き続けた。

何者かになろうとして、懸命にもがく人たちへ――。
料理界のカリスマ・三國シェフ、感涙の自伝。


37年続いた「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉じ、ぼくは70歳で新たな夢を実現する
北海道・増毛(ましけ)での極貧の幼少期、漁師の父と出掛けた海、“料理の神様”に近づきたくて生やした口髭、地獄の厨房とヨーロッパ修行、30歳での開業とバッシング、ミシュランとの決別――。時代の寵児と言われながら、がむしゃらに突っ走ってきたぼくが、一大決心をして「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店する理由と、ぼくが戦ってきた人生のすべて。

どんな一皿よりもエモーショナル!
世界に冠たる“ミクニ”の料理は、彼の苦悶の日々とパワフルで情熱的な生き様から作られる。
生きるための営みと企み、そして熱狂とは――。人生の本質が凝縮された1冊。

感想・レビュー・書評

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  • フランス料理界で「それ以上望むべくもない成功を収めた」三國シェフが、猪突猛進、ガムシャラに料理界を駆け上った自らの半生を格好よく綴った自伝。特技は誰とでもすぐ仲良しになれること。「不可能を可能にするのが、ぼくの人生の目標」!

    超貧しくて、ろくに小学校にも行かず働き詰め自給自足生活を送った少年時代(「時代は昭和でも、暮らしは江戸時代と大差なかった」)、住み込みの丁稚奉公から札幌「グランドホテルのコックになって、日本一のハンバーグを作る」と一念発起、ホテルに突撃して強引な鍋洗い戦法で存在感を示していった青年期、ジュネーブで大使専属の料理人となるチャンスを得てとにかくガムシャラに働き、その後スイスやフランスの一流レストランを渡り歩いてメキメキと腕を上げたヨーロッパ修行時代、日本に帰国して「オテル・ドゥ・ミクニ」を開業し世界的な大成功を収める成熟期。著者の波瀾万丈の半生が一気呵成に語られる。

    読んでいてずっとワクワクしどおしだった。裸一貫、本人の実力と才覚だけで少ないチャンスをものにしてのしあがっていく物語は、どうしてこうも読者を魅了するんだろう。「苦労する覚悟さえあれば、どこかに居場所は見つかる。見つけた場所で、一所懸命にやれば道は開ける。ほんとに開けるとは限らないけど。自分にそれしかやれることがないなら、楽観的にやり続けるしかないと思っている」!

    「シェフは新しい価値の創造者であり芸術家でなければならないのだ」という言葉も格好いい。

    「オテル・ドゥ・ミクニ」、一度行ってみたかったなあ(本書でせっかく店の存在を知ったのに、もう閉店してしまってるとは…、残念)。

  • 誰もやりたがらない鍋洗いを喜んで引き受け、立身したと言っても過言でないだろう。ミクニ氏の生い立ちから武者修行中、帰国後まで本人の内心を吐露。若さゆえの傲岸さが丸みを帯びていくまで考え方の変遷もよく描写されている。言葉の選び方もまた良いなと感じた。

  • 運を引き込むための目の付けどころ、認めさせるためのがむしゃらさ、生き残っていくための我の強さ、周りを捲き込むコミュ力。
    成功する人は、みんなこんな感じだよねぇ。
    因みに、私にはひとつもない。逆に、振り回される側だわ(笑)

  • 親に薦められて。
    シェフの三國さんの自伝。
    世界的に有名な方なのだろうと思うのだけど、食にとことん疎くて、恥ずかしながら何も知らずに読んだ。
    あちこち泣いてしまった…。
    魅力的な人柄が文章からも伝わった。
    ラストの決断に、こちらも胸が熱くなる。

  • オテル・ドゥ・ミクニに行ったのは2019年だったかな? 行く前に読みたかったな。
    目の前の仕事を真剣にやる姿勢には共感。

  • 子どもの頃から評伝というジャンルが好きだった。ポプラ社の伝記シリーズも随分読んだしおとなになってからも子ども向けの漫画の人物伝まで含めるとかなりなものだがあまり期待もせずに手に取った本書はとびきり面白かった。誰かが書評でめっぽう面白いと書いていたから読んでみたのだけれど当たりだった。おすすめです。

  • 印象に残った箇所については、以下のとおり。

    【P34】「大波が来たら逃げるな。船の真正面からぶつかってけ」
    逃げようとして、波を横腹に受ければ船は沈む。大波が来たら、舳先を真っ直ぐ波に向けて思い切り漕ぐしかない、と。

    【P88】人づきあいの秘訣はニコニコ笑いながら遠慮なく近づくこと。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず。懐に入るのはぼくの特技だ。人が大好きだから。そして人は、自分を好きな人を好きになる。

    【P120】村上さんからは三つのことを守りなさいと言われた。大使を閣下と呼ぶこと。十年修行すること。収入は自己投資に使うこと。

    【P144】苦労する覚悟さえあれば、どこかに居場所は見つかる。見つけた場所で、一所懸命にやれば道が開ける。ほんとに開けるとは限らないけど。自分にそれしかやれることがないなら、楽観的にやり続けるしかないと思っている。

    【P244】どんなに巧みにフランス料理を作ろうと、そこになにか新しい価値が加わっていなければ彼らは認めない。腕のいい料理人として認めることはあっても、本物のシェフとは認めない。シェフは新しい価値の創造者であり芸術家でなければならないのだ。

  • もしも何かやりたいことがあって、どうしてもそれができなかったらその世界の鍋を探してみることだ。
    この一言に三国さんの人生が込められてるように思う。どうにかして幸運の女神の前髪を掴むために誰よりも多く、誰よりも綺麗に、誰よりも早くきて、誰よりも遅くまで鍋を磨いた三国さん。
    ここまでの成功を可能にしたのはその後先を考えない飛び込み力と下仕事を厭わない誰よりも汚れた手だ。自分の世界にも鍋はたくさん落ちている。明日からでもどんどん鍋を磨かなければと思う。

  • 下積み時代、明確な目標を設定しながらやることを誰よりもしっかりやり、ステップアップしていく。
    その姿勢に改めて畏敬の念を抱かせていただく。
    『料理というものは、土地に根ざしたものでなくてはならない。地域の人々のために料理をつくる』フェルナン・ポワン
    『ムッシュ・シャペルは毎朝ジープで近隣の農園を回った。新鮮な野菜、搾りたての牛乳に生クリーム、卵も鶏も、牛肉も羊肉も、ほとんどが顔見知りの農家や、酪農家から毎日使う分だけ買い上げたものだった...、彼が毎朝書くメニューには、食材と産地と生産者の名前が記されていた。』アラン・シャペル
    この話、身近で似たような話を聞いた気がする。

  • タクシーの運転手さんと仕事の話をしていたら、この本をいただきました。
    ここに大切なことは全て書いてあったから、どうぞ。がんばってね。
    といわれて。

    三國さんの生い立ちや、料理との出会い、ここらへんまでで2回泣きました。
    そして日本に戻られる際のあの気づきは、本当に学びになりました。
    何者かになろうとしていたというのは、わたしも経験があります。

    退勤後一気に読み上げることができました。
    働くこととは何かを考えてしまった時に読むことがおすすめです。

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著者プロフィール

1954年北海道・増毛町生まれ。15歳で料理人を志し、札幌グランドホテル、帝国ホテルにて修業後、74年、駐スイス日本大使館料理長に就任。ジラルデ、トロワグロ、アラン・シャペルなど三ツ星レストランで修業を重ね、82年に帰国。85年、東京・四ツ谷にオテル・ドゥ・ミクニ開店。99年、ルレ・エ・シャトー協会の世界5大陸トップシェフに選出される。15年、フランス共和国レジオン・ドヌール勲章シュバリエを受勲。

「2023年 『スーパーの食材が高級レストランの味になる 三國シェフのすご技絶品レシピ 永久保存版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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