「私はこうして作家になった」、「私は競馬で飯を食ってきた」の2つのエッセーを収録。
かなり初期のエッセーだが、著者ならではの切れ味のある文章が味わえる。売れっ子作家として大成する前の(直木賞受賞前の)著者の破天荒ぶりが覗けて嬉しい。競馬に関するプロフェッショナルな蘊蓄には舌を巻く。
下積み時代が長かった著者。ブティック経営、競馬評論家、そして小説家という三足のわらじを履いて八面六臂の大活躍。加えて自衛隊入隊、借金取りなどの裏街道の経験もある。その引き出しの多さが作品に深みをもたらしているんだなあ、と改めて納得。
自衛隊入隊を決意したは、「実はまったく純粋な気持ちで、三島の死を探求するため」だったという。著者はコテコテの文学青年だったわけだ。
純文学を目指した著者が、何故ピカレスク小説でデビューしたのか、その経緯も面白かった。初仕事で自衛隊ネタのエッセーの連載を始めたら、早速自衛隊からお叱りを受け、切羽詰まった著者が編集者と飲んだ席で裏家業の面白エピソードを語ったところ大受けてしまい、(不本意ながら)裏家業点で極道ネタ採用となってしまったのだとか。
無類の博打好きの著者。競馬は半ば職業だったようだ。「競馬で勝つやつはいない」と言いつつも、競馬でしっかり稼いできた著者が語る、競馬の極意。いつも同じ金額を持って出掛けるべし、得意のレースを決めるべし、前日予想でパドックで見る馬を限定せよ、などなど、いちいち納得。この合理的な考え方は、競馬をやらなくても大いに参考になる!
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセー
- 感想投稿日 : 2021年9月2日
- 読了日 : 2021年9月2日
- 本棚登録日 : 2021年9月1日
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