街場の教育論

著者 :
  • ミシマ社 (2008年11月15日発売)
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2007年に著者が神戸女学院大学の大学院で行った「比較文化・文学」の講義録を編集したもの。街場シリーズ第四弾。

第一次安倍内閣で「教育再生」が進められていたこともあってか、教育問題を取り上げている。面白かったのは、第8講「「いじめ」の構造」と、第9講「反キャリア教育論」。あと、第11講「宗教教育は可能か」での宗教や霊性に関する著者の考え方に賛同。

著者は、80年台から深刻化した「いじめ」問題について、その元凶は、国策的に社会全体をグローバル資本主義に移行させたことだとしている。子供には本来、最初に集団行動・他者との協調心を身につけさせるべきところ、グローバル資本主義に適合した「自分らしさ」イデオロギーの下で、他者を打ち負かすことをよしとする個人主義的な考え方を植えつけられ、「集団形成をすることに対する忌避と「集団を作らなければならない」という強制が絡まり合って、非常に不安定な集団的な心理状態になって」しまったため、と分析している。消費拡大策としての家族解体と個人消費の促進(自己表現としての「自分らしい消費生活」の推進)も、同じグローバル資本主義化の文脈なのだという。

そういえば、マスコミ等でいじめ問題がクローズアップされることは少なくなってきたような気がするが、改善してきているのだろうか。それとも、スマホとネットでより陰湿ないじめが跳梁跋扈している?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2019年5月13日
読了日 : 2019年5月13日
本棚登録日 : 2019年5月12日

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