掟上今日子の備忘録

著者 :
  • 講談社 (2014年10月15日発売)
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本棚登録 : 3986
感想 : 342
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今日子さんとは、1人で決断できる賢さを持つのに間に合った人だと思います。

「忘れる」という現象は、人が生きる上で当然に起こることですので、今日子さんが主人公になり得るのは、「忘れるから」ではないと思います。
でも、昨日の「何か」ではなく「昨日」を忘れてしまっても、今日も何かを「決断する」場面はあり、そのための決断には、基づく根拠が必要です。
根拠の候補には、例えば誰かの助言や、自分の価値観などがありますが、ここで今日子さんにとって「誰かの助言」は、記憶に残らないため「ない」ものとみなされるはずですので、今日子さんのすべての決断は、自分の価値観に基づいていると考えられます。
「根拠」が足りなければ、決断に至らず迷います。でも、今日子さんは、昨日のできごとは忘れても、すでに培った価値観は、生きていくのに十分なほど揺るぎないものであるため、自分の価値観「だけ」で今日も生きていられるのだと思います。
今日子さんが格好いいのは、昨日を忘れても今日を生きられるからではなく、昨日を忘れても今日を生きられるほどの価値観の蓄積をすでに済ませていると思うからです。

なぜ昨日を忘れてしまうことになったのかとともに、いったいどんな経験を積んで価値観の蓄積に至ったのかも気になります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2024年2月4日
読了日 : 2016年5月1日
本棚登録日 : 2015年9月19日

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