不夜城 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (1998年4月23日発売)
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本棚登録 : 2452
感想 : 232
4

最近読んだ小説の中で、トップクラスに壮絶な描写、そしてラストでした。謀略&バイオレンス&セックスのどストレートなノワール+ハードボイルドサスペンスと思って読み進めていたら、ラストでこんな感情になるとは思いもしませんでした。

小説の舞台となるのは歌舞伎町。中国や台湾のマフィアが暗躍するなか、繰り広げられる追走劇と策略。

主人公となる劉健一は、自身の生き残りをかけてかつての相棒を探し出し、組織に差し出さなければならなくなる。そこに謎の夏美と名乗る謎多き美女が絡んできて、話はどんどん加速していきます。

健一と夏美。互いに孤独を抱え惹かれあいながらも、一方でこれまで育ってきた境遇や、そしてそれぞれの事情ゆえに、相手を信じ切れず常に疑心暗鬼の状態。しかし健一は夏美を切り捨てた方が楽と、頭では理解しつつも夏美の孤独を自分に重ね、切り捨てられない。

二人の関係性は自分の中では、ルパンと峰不二子に近いものがあったような気がします。この女性にこれ以上関わらない方がいい、と頭では理解しつつも惹かれざるを得ない。ルパンの場合はそれがコミカルに描かれているけど、この不夜城はそれがより壮絶に、より切なく、より狂おしく描かれている印象です。

性描写がけっこうキツイ部分が多く、今までの自分はあまりそういうのは好きではなかったけど、この小説に関してはそれに意味が感じられた気がします。

激しく、オーバーな描写はこの手の小説ならではの、読者へのサービスかとはじめは思っていました。しかしその激しさが、魂のぶつかりあいであり、健一と夏美、お互いがそれぞれを渇望する、その感情、情欲の強さを表しているように、後半は思えてきました。単に体の関係を超えた、精神の強い結びつきがここで表現されています。

想い人であり、命を預けあう相棒、パートナーでありながら、一方で常に裏切られるのではないかという不安が付きまとう二人。そんな二人に迫るマフィアたちとタイムリミット。二人が迎える運命は……

それまでの性描写であったり、バイオレンスな部分であったり、そしてラストの展開と、なかなかに忘れがたい作品になりそうです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー・サスペンス
感想投稿日 : 2024年2月13日
読了日 : 2024年2月4日
本棚登録日 : 2024年2月13日

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