コロロギ岳から木星トロヤへ (ハヤカワ文庫 JA オ 6-20)

著者 :
  • 早川書房 (2013年3月29日発売)
3.65
  • (41)
  • (95)
  • (76)
  • (12)
  • (7)
本棚登録 : 710
感想 : 87
3

西暦2231年の木星トロヤで、宇宙船内に閉じ込められた二人の少年。一方2014年、日本のコロロギ岳では、とんでもない来訪者が訪れ、天文学者の百葉(ももは)と水沢は、閉じ込められた少年たちを救う手助けをすることになるのだが…

 もっと分かりやすく、この小説の説明をするなら、200年越しの人命救助! 200年後に閉じ込められる少年たちを、いかに現代から救うか、ということがテーマです。

 百葉たちはどうやって200年後にメッセージを残すかに苦心します。メッセージを受け取ることは、可能なのですが、それに対し返信しようとすると、200年先にも残っている形で、伝言を残さなければならないからです。

 200年先にも伝言を残すには、いろいろな人間が世代を超えて、メッセージを残し、伝えるようにしなければいけません。そして、そうした動きは歴史を変えることにもつながっていきます。

 そうした壮大な動きが、二人の少年を救うためだけに行われる。単純な動機なのにスケールが壮大で、それが読んでいてとっても素敵だと感じました。

 読んでいて思い出したのは映画『オデッセイ』と『火星の人』。一人の宇宙飛行士を救うためにあらゆる人が頑張るその作品と、この『コロロギ岳~』には、共通のバイタリティが、根底にあるような気がします。

 時空を超えて紡がれる、人間の善意の物語だったと思います。

第45回星雲賞〈日本長編部門〉

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF・ファンタジー
感想投稿日 : 2016年4月18日
読了日 : 2016年4月8日
本棚登録日 : 2016年4月8日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする