妻殺しの容疑がかけられた夫。夫は一人の女性と一晩中ずっと一緒にいたと証言するのだが、なぜか女性の目撃証言は全く得られない。死刑判決が夫に下される中、刑の執行までにアリバイを証明できるのか。
『夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった』
この冒頭の一文がとにかく有名な一作です。この一文自体もお洒落かつリズム感もよくて印象的なのですが、この冒頭から始まる”幻の女”との一夜の描写の洒落てる感がとにかくすごい!そのためか、この女との一夜自体が”幻”だったのじゃないか、と読み始めは本気で思いました(笑)。重要な証拠が見つかりそうになるたびに、それがスルリと逃げてしまうのも、まさにこの本のタイトルらしいと、思います。
ミステリとしては結構強引な展開が多いです。しかしハードボイルド的な展開に、独特の詩情あふれる文章は現代においても色あせてないと思えます。もちろんタイムリミットサスペンスとしても十二分に現代サスペンスに通用する出来です。
海外ミステリーを語るうえでは外せない作品と言われるだけあって、展開、文章どちらも楽しまさせていただきました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー・サスペンス
- 感想投稿日 : 2013年12月30日
- 読了日 : 2013年12月30日
- 本棚登録日 : 2013年12月24日
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