図書館より
独り暮らしの老人の殺人事件と、事件現場から消えた黄色の花の謎をめぐるミステリー。
まずプロローグで通り魔殺人事件と少年の初恋のエピソードが描かれて、そこから本編になり、殺人事件に黄色い花と、
こうした一見脈絡のないエピソードが最後には綺麗につながるのがさすが東野さん、と感じました。まるで出来のいい手品を見ているよう。
事件の捜査もそつがなく組み立てられていて、文章も相変わらず読みやすいので、読んでいてストレスを感じないです。
難点を言うと黄色い花をめぐる物語がかなり現実味が薄く感じられたことかなあ。登場人物たちもみんないい人ばかりでそれはそれでいいのですが、もうちょっと毒味があってもいいのかな、と思いました(このあたりは完全に個人の好みの話ですが)。
でも、その分作品のメッセージがよく伝わってくるように思います。登場人物の中に原子力工学を学んでいる大学院生がいるのですが、
彼は例の原発事故のため自身の今まで歩んできた道や、就職などこれからの将来について悩んでいます。
そんな彼が事件とそこに関わった人々の思いを知りどんな答えを出すか、これも読みどころの一つだと思います。
第26回柴田錬三郎賞
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー・サスペンス
- 感想投稿日 : 2015年5月24日
- 読了日 : 2015年5月18日
- 本棚登録日 : 2015年5月16日
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