コーヒーとサンドイッチの法則

著者 :
  • 東洋経済新報社 (2008年12月5日発売)
3.46
  • (12)
  • (18)
  • (29)
  • (10)
  • (0)
本棚登録 : 193
感想 : 26
4

新規顧客の獲得コストはリピート顧客の維持コストの5倍がかかるといった話、「範囲の経済」を活かし、コーヒーを買いに来た客にサンドイッチも売るという話(本書のタイトルになっている)は、経営戦略論としては当たり前の話で、その点は特筆すべきものはない。本書の優れている点は、身近な事例(スターバックスやホテルなど)を豊富に取り揃えているところである。

一つ一つの事例は、本書に寄らなくとも聞きかじったことのあるものが多い。しかし、定量的な分析を行い、裏づけを簡潔に立証しているわけではなかった(恐らく、証券アナリストたちが幾度となく既に分析済みであろう)。

本書の優れている点は、財務諸表や有価証券報告書などのIR情報を読み解いて定量的に分析した上で、それを分かりやすく物語に綴っていることである。

まだ社会に出て幾年も経っていない27歳の若者が本書を書き上げていることに驚嘆する。

かのドラッカー氏の処女作が29歳の時であったことを考えると、後に大成する人は、20代のうちに頭角を現すのだろうか。

<hr>
目次
第一章 忙しいのに、儲からないのはなぜか?顧客収益性戦略
第二章 仕事をしなくても、儲ける人がいるのはなぜか?顧客維持戦略
第三章 同じく車なのに、グレードが複数あるのはなぜか?製品ライン戦略
第四章 喫茶店でサンドイッチを売っているのはなぜか? 範囲の経済戦略
第五章 保険引受で赤字の保健会社が利益を出すのはなぜか?
第六章 なぜ、多くの会社が、よく提携をするのか?

読書メモ
第一章
39 最後にすべきことー「顧客をクビ」にする

第二章
47 満足している顧客の4つの特徴
  ?何度も購入してくれる
  ?そうでない顧客よりも購入額が高くなる
  ?時間の経過とともにかかるコストが低下する
  ?その企業を他の潜在顧客に紹介してくれる
57 顧客の平均継続期間を5年から6年へと1年延ばすと、顧客の生涯価値は25〜85%増加
62 フィリップ・コトラーによれば、企業のマーケティング予算の70%が、新規顧客の獲得に向けられている。
63 顧客維持を高める4つの方法
  ?顧客満足
  ?ロイヤルティ・プログラム
  ?スイッチングコスト
  ?失った顧客を取り戻す

第三章
80 両極回避:選択肢が3つあれば、真ん中が一番安全そうに見える

第四章
108 範囲の経済:既存の資源を活用することで費用を節約しつつ売上を増加させること。相乗効果とも呼ばれる。

121 ホテルの運営方式
 賃貸借契約 例:ザ・リッツ・カールトン東京
  オーナー :不動産
  ホテル会社:損益の帰属、従業員、人事・運営権、ブランド
 マネジメント契約 例:パークハイアット東京
  オーナー :不動産、損益の帰属、従業員
  ホテル会社:人事・運営権、ブランド
 フランチャイズ 例:フォーシーズン椿山荘
  オーナー :不動産、損益の帰属、従業員、人事・運営権
  ホテル会社:ブランド
 所有直営    例:帝国ホテル
  オーナー :すべて
122 ヒルトン・ホテル:所有直営60、リース203、運営委託343、フランチャイズ2242(2006年)

125 藤沢薬品工業のプログラフの売上
 適応:肝移植>骨髄移植>腎移植>重症筋無力症>心移値>肺移値>関節リウマチ>膵移値>ループス腎炎
 発売国:国内のみ>世界80カ国

128 日本マクドナルド:サンドイッチ41.3%、ポテトを含むデザート:29%、ドリンク:21%、
   ブレックファースト:3.9%、ブレックファーストデザート:2.7%
131 コーヒーと砂糖とミルクの第一法則
  自分の考えていることと顧客の考えていることは必ずしも一致しない。
  コーヒーと砂糖とミルクの第二法則
  顧客は、自分のその製品だけが欲しいとはかぎらない。

133 クレジットカード業界(2006年)
  加盟店手数料27.5%、年会費7.9%、会員からの手数料8.7%、金利56%
134 自動車ディーラー
  新車・中古車部門の売上高営業利益率:10%前後
  サービス業務の売上高営業利益率:38.1%
  1社平均(百万円、平成18年度、社団法人日本自動車販売協会連合会)
  売上:   新車6574、中古車1403、サービス・部品1951、その他142、合計10072
  売上総利益:新車582、中古車195、サービス・部品744、その他17、合計1539
  収入手数料:559
137 オリエンタルランド
  客単価:チケット4226円、商品販売3096円、飲食販売2048円、合計9370円

第五章
158 フロート:ほぼ無コストで資金調達を行う方法
  保険会社:保険料を徴収>運用して利益を得る。
  ウォルマートのビジネス・タイムライン:
   仕入〜配送トラックが店舗に到着
   〜店舗の棚に置かれる:4時間
   〜販売・現金化:28時間
   〜仕入代金を支払う:約8日間
  デルのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(2008年2月1日)
   A.売掛金回転期間 :36日
   B.在庫回転期間  :8日
   C.買掛金回転期間 :80日
   D.現金回転期間  :36日(D=C-A-B)
  スポーツクラブなど:年間一括払い

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月5日
読了日 : 2010年6月16日
本棚登録日 : 2018年11月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする