幼女戦記 (1) (角川コミックス・エース)

  • KADOKAWA (2016年12月10日発売)
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本棚登録 : 856
感想 : 23
4

アニメ1期及び劇場版視聴済。
アニメが気に入ったこと、漫画の評判が良いこと、戦術戦略の描写は文字及び絵の混合媒体である漫画が最適であろうことなどから、漫画を読んでみることにしました。原作は未読。
噂に違わぬ良い出来で、続きも期待です。

◆動機の乏しい物語
私は物語を読むとき、キャラの動機を重視します。
特に「何故生きるのか?」という問いは、異世界転生物には必要不可欠なものでしょう(異世界転生物が大量生産され、文脈が成熟したことにより、動機にこだわらない物語も増えているでしょうが)。
人生リスタートです、となったとき、生きるモチベーションはどこから湧いてくるの? ということですね。
一度「死」を体験しているため、生前での死への忌避と比べるといくらか減じると思いますし、対して生きる動機を描く重要性は増すように思います。
さて翻って本作はどうでしょうか。
本作にも動機は書かれています(厳密には、本巻には無かった……かな?)。
が、それは取ってつけたような、薄っぺらいものです。
でも、本作は面白いんですよね。
物語の面白さのひとつとして、動機の公私(ミクロとマクロ)の重なりや、動機による成長や、動機完遂によるカタルシスなどがあるでしょう。
本作は動機の物語でないけど、面白い。
本作が描いているのは、ドイツを元ネタとした戦闘と戦術と戦略。
それも、対ドイツ視点での「倒すべき悪しきドイツ」像でなく、ドイツ側の視点での物語。
とても興味深いなぁと思います。

◆すれ違い漫才感
アニメより多めに内語が書かれているので、あっ内面ではこんなにすれ違っていたんだと、ちょっと新鮮。
ギャグパートも楽しめそうで、期待です。

◆自称神
神自身が転生させていると言ったときから「おや?」と思っていましたが、ユダヤ教系譜というより、仏教に親和性の高い神ですよねw
輪廻転生も解脱も涅槃も、用語的にも思想的に仏教系ですしw
まぁいずれも人の解釈によって成立しているものなので、実像といえる神はこの「自称神」なんだ! と言えなくもないですけど、その辺結構雑なのかなとちょっと面白いです。
このあたりも、前述の動機の話と同じで、あくまで書きたいものを書くための舞台装置的なものかなと感じます。

◆絵の素晴らしさ
いやー、漫画版の絵、素晴らしいですね。
少女漫画とまでは言わないけど、背景含め繊細で美しいタッチです。
このくらいの塩梅の絵、好きなんですよ。
それでいてターニャの邪悪な笑顔も突き抜けていて、欲しいものが揃っている感。

◆解説が丁寧
まめに歴史等の解説が入っていて、テンポを悪くするんじゃと一瞬思いましたが、いやこれ良いですね。
書き方が軽めなので、読んだとき重くなり過ぎず、かつ理解しやすい。
歴史に知見のない私には、良い塩梅に思えました。

良さげなコミカライズに出会えて、嬉しいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2023年2月2日
読了日 : 2023年2月2日
本棚登録日 : 2023年2月2日

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