トウェイン完訳コレクション 不思議な少年44号 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2010年8月25日発売)
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感想 : 12
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この本には因縁がある。
たしか中学生の頃トウェイン『不思議な少年』(岩波文庫)に出逢い、その徹底したペシミズムに衝撃を受けた。これはヘッセの『デミアン』と並んで、少年時代の私に深い影響を与えた本だった。
ところが、この岩波文庫版『不思議な少年』は、なんと偽作だという。
編集者と伝記作者が共謀し、トウェインの遺稿を改鋳したらしいのだ。
なぜそんなことをしたのかまったくわからない。何故だろう?
偽作版は、この真作と最初と最後、および、いくつかのシーンが似ているように思う。
さて真作版を読んでみると、偽作とはぜんぜん違うストーリーが入っているが、結局、主人公の「不思議な少年」が語り手の少年を連れてあちこちにタイムトリップし、結局決定論的運命論、厭世観に導くという点はだいたい合っている。が、まるで別物である。
未完成っぽい小説であり、ストーリーもなんとなくまとまっていないように思える。なんだか、焦点がはっきりしないのである。かえって偽作の方が、端的に厭世観まじりの決定論を表出していて、印象的だった。とはいえ、かなり昔に読んだ本なので、今読んだらどう思うかわからない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2011年3月19日
読了日 : 2011年3月19日
本棚登録日 : 2011年3月19日

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