明日この手を放しても (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年4月24日発売)
3.47
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本棚登録 : 230
感想 : 37
3

買ったきっかけは、
何か小説読みたいと思って本屋に立ち寄って、
平積みされてた中で読みやすそうだと思ったからだったかな。

前評判を聞いていたわけでもなく、
初めから面白みがあるわけでもなく、
モチベーションが保てず30ページも読まずして、
他の本に手を出してしまった。

それから1年以上経って、読了!!
物語全体の割と初めの段階、第3章に位置する1997年凛子から
物語に引き込まれた。読むペースもあがり、すぐに読み終わった。

一番の題材になってる兄妹の距離感のうごき。期待通りすてきだった。
最後、凛子が一人暮らし始めちゃうのが、すごく哀しかった。
けど、真司が結婚したら、迷惑になるしっていうリスクヘッジかな。
弱さを怒りに変換して外部に露見発散する真司。
弱さを見せずに、強さを強調する凛子。
語り手にさえ隠している、凛子の弱さがもっとあるように感じた。
真司の性格は、最初はダメだと感じてたけど、最後の方はすごく魅力的に感じてた。作中に変わったことも大いに影響しているんだろうけど。ダメっていう決めつけはいけないし、仮にダメだったとしても味付けしだいでよくなるんだなって思った。
兄貴が凛子のことで替わりに怒ったり、やさしくて、すごく良い。
一見、単なる怒りんぼうの真司の怒りが、ちゃんと凛子の役に立っているんだなぁというのが読んでいて嬉しくなった。

マンガ作りについての言及も興味深かった。知らなかった訳でもないし、想像もしてたけど、ストーリーを考える側は複数から選ぶ側であって、マンガは選ばれたもので、読者は展開を予想しながらも、ひとつの答えとしてマンガを受け入れる訳で。そうじゃない読者もいるかもしれないけど。

恋愛ネタも含まれてた。存在感は大きくはないけど、共感したり、勉強になったりして、引用したくなるような言葉があった。

実際に笑ったり泣いたりすることはなかったけど、
人物像が鮮明で、登場人物の感情に親しみを持てて、
感情移入はしやすかった。特に凛子にしてたかも。
読むペースも相まってか、後半物語に流れる時間のスピードも早かったけど、
もっと遅くなればいいのにと思えるほど、もっと読んでいたいと、もっと兄妹の続きを聞きたいと思える良い作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 買った本
感想投稿日 : 2012年5月29日
読了日 : 2012年5月29日
本棚登録日 : 2010年6月3日

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