親子というものは奇妙な関係である。
「家族」というくくりは、子どもが独り立ちするまでは確かにあった。
が、その後の「家族」には後悔や苦悩、時として束縛の香りすらする。
スバシュとウダヤン、1940年代生まれの西ベンガルの兄弟。
弟は凶弾に倒れ、アメリカで暮らす兄は弟の妻と子を引き取る。
物語は兄弟や妻ガウリ、その子ベラの視点で、様々に揺れ動く感情を、淡々と描く。
三人称だが、短いフレーズでそれぞれの想いがよく伝わる文章。
作者ラヒリは、これまで描いた「インド系移民」というテーマはやや離れて、人間ドラマの色合いの強い物語をかたる。
60年代に吹き荒れた「革命」という熱病、家庭という伝統の崩壊、それでも関わっていく人々の長いドラマを、舞台となる土地の様子とともに、痛々しくも清々しく、味わうことができた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外小説
- 感想投稿日 : 2024年1月15日
- 読了日 : 2024年1月15日
- 本棚登録日 : 2023年12月26日
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