正義論

  • 紀伊國屋書店 (2010年11月18日発売)
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内容紹介

「正義」とは何かを考える際に、その原点となるロールズの「論」とは…… 「ロック、ルソー、カントに代表される社会契約の伝統的理論を一般化し、抽 象化の程度を高めること、私が企ててきたのはこれである。……有力で 支配的な伝統をなしてきた功利主義よりも優れている代替案(「公正としての正義」) を、この理論が提供するだろう。……
契約説の伝統に伏在しており、功利主義に取って代わりうる正義観の構造的諸特徴の最重要部分を読者がはっきり理解できるようになり、その正義観をいっそう精緻化しうる理路を本書が指し示すことができるなら、著者である私の野心は余すところなく実現されるだろう。  

伝統的な正義観は複数あるが、この正義観こそが、正義 /不正義を見分ける私たちのしっかりした判断にいちばん近似しており、デモクラシーの精神と制度を兼備した社会の道徳的基盤として最もふさわしいものとなる。」(初版序文より)  
ロールズはこう書き起こした。この本で彼は、「正義の至上性」に関する私たちの直観的な確信(「社会の制度が何はさておき実現すべき価値は、効率性や最大幸福ではなく《正義》にほかならない」!)を、社会倫理や社会科学の理論と丹念に突き合わせる作業を通じて、その妥当性を説明しようと努めている。

出版社からのコメント

ロールズの『正義論』は、いま注目のサンデル「ハーバード白熱教室」の必読図書であり、『これからの「正義」の話をしよう』の中でもたびたび言及されている20世紀の名著です。1971年米国で初版が刊行されるや、「まともな社会」を希求する英語圏の一般読者の心をつかみ、その後世界の30を超える言語へと翻訳されました。  
社会制度を評価するための「アルキメデスの点」を見出そうとするロールズは、全員が平等な自由が分かちもって社会生活をスタートすべきこと、そして「最も恵まれない人びと」の暮らし向きを最大限改善すべきことを主張します。そうした彼の正義観(公正としての正義)は、混迷する現代社会の矛盾を照らし出し、その改革の指針を提供するものと言えるでしょう。
本書は、1971年に刊行された『正義論』(旧邦訳は同書のドイツ語訳にあたって作成された修正リストをもとに1979年、紀伊國屋書店から刊行、現在品切れ中)の改訂版(1999年刊)を新たに訳出したものです。三部九章87節の構成は初版と変わりませんが、初版刊行後ロールズに寄せられた批判、指摘をもとに「自由(の優先権)」「基本財」の説明などに訂正が施されました。改訂版翻訳にあたっては、多くの〔訳注〕をつけ読者の「読みやすさ」を考慮するとともに、原注の引用文献の翻訳版刊行情報を充実させ、また420項目の事項索引、280名の人名索引をつけ、ロールズ研究の便を図っています。

内容(「BOOK」データベースより)

ロック、ルソー、カントに代表される社会契約の伝統的理論を受け継ぎ、功利主義の「最大多数の最大幸福」に取って代わる、著書が構想した“公正としての正義”とは…20世紀の名著、待望の新訳。

著者について

ジョン・ロールズ(John Rawls)
1921-2002 アメリカの倫理学者。元・ハーヴァード大学教授。 1950年プリンストン大学で「倫理の知の諸根拠に関する研究」で博士号取得。コーネル大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)を経て、1962年ハーヴァード大学哲学部教授に就任、哲学科主任を経て、1991年より名誉教授。 1971年に『正義論』を発表。本書は大きな反響を呼び、ドイツ語、フランス語、スペイン語、コリア語、中国語など世界各国で翻訳された。 ほかの著書として、『政治的リベラリズム』(1993)、『万民の法』(1999)(中山竜一訳、岩波書店、2006)がある。また1950年から60年代の主要論文を集めたものに『公正としての正義』(田中成明編訳、木鐸社、1979)があり、ハーヴァード大学での講義配布資料を補正した『ロールズ哲学史講義』(講義録 2000)(ハーマン編、坂部恵監訳、みすず書房、2005)、『公正としての正義 再説』(2001)(ケリー編、田中ほか訳、岩波書店、2004)がある。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ロールズ,ジョン
1921年アメリカ、メリーランド州生まれ。元・ハーヴァード大学教授。倫理学者。1950年プリンストン大学で「倫理の知の諸根拠に関する研究」で博士号取得。コーネル大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)を経て、1962年ハーヴァード大学哲学部教授に就任、哲学科主任を経て、1991年より名誉教授。1971年に『正議論』を発表。大きな反響を呼び、ドイツ語、フランス語、スペイン語、コリア語、中国語など世界各国で翻訳された。2002年歿

川本隆史
1951年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程(倫理学専攻)修了。博士(文学)。東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は社会倫理学

福間聡
1973年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程(哲学専攻)修了。博士(文学)。東京大学大学院人文社会系研究科グローバルCOE特任研究員。専攻は社会哲学

神島裕子
1971年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程(国際社会科学専攻)修了。博士(学術)。中央大学商学部助教。専攻は政治哲学、国際倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次

第一部 理論
第一章 公正としての正義 1正義の役割/2正義の主題/3正義の理論の中心理念/4原初状態と正当化/5古典的功利主義/6付随する複数の相違点/7直観主義/8優先順序の問題/9道徳理論に関するいくつかの所見
第二章 正義の諸原理 10諸制度と形式上の正義/11正義の二原理/12第二原理の複数の解釈/13デモクラティックな平等と格差原理/14公正な機会均等と純粋な手続き上の正義/15予期の基礎としての社会的基本財/16関連する社会的地位/17平等を求める傾向/18個人に関する原理―公正の原理/19個人に関する原理―自然本性的な義務
第三章 原初状態 20正義の構想の擁護論の性質/21複数の選択候補の提示/22正義の情況/23正の概念の形式的諸制約/24無知のヴェール/25当事者たちの合理性/26正義の二原理にいたる推論/27平均効用原理にいたる推論/28平均原理にまつわるいくつかの難点/29正義の二原理を支持するいくつかの主要な根拠/30古典的功利主義、不偏性、そして厚意
第二部 諸制度
第四章 平等な自由 31四段階の系列/32自由の概念/33良心の自由の平等/34寛容および共通の利益/35不寛容派に対する寛容/36政治的正義と憲法/37参加原理にかかる諸制限/38法の支配/39自由の優先権の定義/40<公正としての正義>に関するカント的解釈 第五章 分配上の取り分 41政治経済学における正義の概念/42経済システムに関する若干の所見/43分配的正義の後ろ盾となる諸制度/44世代間の正義の問題/45時間選好/46優先権に関する追加的なケース/47正義の諸指針/48正統な予期と道徳上の功績/49混成構想との比較/50卓越性原理 第六章 義務と責務 51自然本性的な義務の原理の擁護論/52公正の原理の擁護論/53正義にもとる法を遵守する義務/54多数決ルールの位置づけ/55市民的不服従の定義/56良心的拒否の定義/57市民的不服従の正当化/58良心的拒否の正当化/59市民的不服従の役割
第三部 諸目的
第七章 合理性としての善さ 60善の理論の必要性/61いっそう単純な事例に即した善の定義/62意味に関する覚え書き/63人生計画に即した善の定義/64熟慮に基づく合理性/65アリストテレス的原理/66善の定義を人びとに適用する/67自尊、卓越および恥辱/68正と善との間のいくつかの相違点
第八章 正義感覚 69秩序だった社会という概念/70権威の道徳性/71連合体の道徳性/72原理の道徳性/73道徳的情操の特徴/74道徳的態度と自然本性的態度との結びつき/75道徳心理学の原理/76相対的安定性の問題/77平等の基礎
第九章 正義の善 78自律と客観性/79社会連合という理念/80嫉みの問題/81嫉みと平等/82自由の優先権の諸根拠/83幸福と有力な人生目的/84選択の一方法としての快楽主義… 対照表/事項索引/人名索引

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学・倫理学
感想投稿日 : 2018年5月7日
本棚登録日 : 2018年5月7日

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