この本を読むまで全く知らなかった。
これはスゴイ。レベルが違い過ぎる天才だ。
日本にもこんなスゴイ人がいたのかと、感心する一方、なぜこういう人材が今の日本から輩出できないのか?
時代背景の影響だけではない、大切な何かが現代は欠けているのではないだろうか。
まさに平和ボケだからか?そんな事すら感じてしまう。
当時だってササキは異質な存在だったはずだ。
しかしそれを周囲も受け入れ、自由に行動させる風潮が社会全体で容認されていた。
イノベーションは管理政策からは絶対に生まれない。
自由な発想と共創こそが最も大切なのだ。
そのことをササキは人生を駆けて体現した。
ササキの人生の起点は、幼少期の体験だ。
生まれてから京都大学に入学するまで、日本統治下の台湾で暮らしたことが、ササキの人生を決めたのだ。
日本であって外国。日本統治下であっても、現地の人達といかにこれから協力して台湾を開拓していくか。
その様子を間近で見て接した幼少体験は大きな意味を持つ。
ササキの魅力は、本人の一技術者としての能力だけに留まらない。
一つの目的のために他者と協力し、持っている技術は分け与える。
更に先入観なく優秀な人材を抜擢し、目標に向かって高みを目指していく。
そういう感覚は、幼少時代の体験が刷り込まれたからこそなのではないだろうか。
戦争体験も大きく影響をしているはずだ。
1915年生まれのササキは、終戦時で30歳。
技術者のササキは軍需工場の工場長を任されている。
この頃からすでにマネジメントを経験できている点が、今の時代と大きく異なる点だ。
今の時代は少子高齢化の影響で、40歳50歳になっても、部下が入らず管理職にすらなれない人が多い。
これでいきなり部門長を抜擢されても、今まで全くリーダー経験がないために、部下を育てる準備すら出来ておらず、機能不全を起こしているのだ。
これは、日本全体の特に歴史のある会社ほど同様のことが起っている。
若い内からリーダーとしての資質を伸ばしていかないと、将来のマネージャーには絶対に成り得ない。
若くして現場だけでなく、マネジメントも勉強させる。
そしてグローバルな視点と人脈、経験を早くから植え付ける。
日本社会全体でこういうことを実践していかないと、本当に人が育たない。
この辺はこういう伝記を読むたびに痛感させられることだ。
確かにササキは突出している。
最後はシャープの副社長という肩書だったが、レベル的にはそんな器では決してない。
日本を技術立国として牽引したのは、間違いなくササキの功績だ。
自分のような凡才にはとても真似は出来ないが、こういう人達の足跡を知ることで「その中でも自分ならこれは真似できるのではないか?」と考えることが出来ると思うのだ。
何よりすごいのは、1915年生まれのササキが、102歳まで生きたことだ。
なんと2017年という、つい最近までこの世に存在していたというのが本当に素晴らしい。
長寿もそうだが、情熱を持って人生を生きること。
こういう人になりたいと思うし、少しでも近づければと思う。
まだまだ諦めずに前に向かって進むしかない。
(2020/6/20)
- 感想投稿日 : 2020年6月21日
- 読了日 : 2020年6月20日
- 本棚登録日 : 2020年6月21日
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