世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

著者 :
  • 英治出版 (2012年11月13日発売)
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この時点ですでに「両利きの経営(深化と探索)」を唱えていたのか。
これだけ情報が伝播するのが一瞬という時代にも関わらず、人の心に言葉が根付くのには逆に時間がかかっているような気がしてしまう。
2021年の今でこそ、社内のみならず各所で「両利きの経営」の話を聞く。
しかもこの著作、約10年前に発行であるが、この10年間で両利きを達成して業績をV字回復した会社はほとんどないということか?
それだけ「両利き」が根付いてないということか。
この10年で両利きを意識していれば、必ず業績は回復しているはず。
「『両利き』なんて10年前の理論じゃないか」で切り捨ててもいい話だ。
しかし10年経った今でもこれらが実現できていないことは何を示唆しているのだろう。
本書でも書かれているが、ドラッカーもポーターも今の経営学者は研究していない。
学問にも栄枯盛衰はつきものと思うが、それではこの10年間でどの部分がどう進化していったのかが知りたいところだ。
ビジネスは確かに大きく変化している。
個人的な考えだが、日々の技術進歩、科学の進歩があって、それがビジネスに転用されて変化していっているように感じる。
理想的な経営理論があって、それに合わせて後追いでビジネス自体が変化するということはないと思う。
やっぱりテクノロジー起点と考えるのだが、それは偏った考えだろうか。
一方で最近は人事組織についてもテクノロジーを活用するようになっている。
経営は「戦略」という言葉が一般化したくらい、戦争・競争と切っても切り離させない。
どういう組織が強いのか。どういう人材がいれば勝負に勝てるのか。
ライバル企業に打ち勝つために、この辺をHRテックとして効果的に管理する方法も流行っている。
本書を読むと「必ず勝つ戦略」がどこにもないことに気が付いてしまう。
それは当然であって、もし必ず勝つ戦略が体系化されていて、誰でも真似が出来たらどうなるだろうか。
どの企業もその必ず勝つ戦略を使ったらどこが勝つのだろうか。
そう考えると「どうすれば勝てる組織を作れるか」という点に集約されていくのだということが見えてくる。
なぜ成功した経営者ほど、M&Aでオプションを多めに積み上げてしまうのか。
日本人は集団主義と言われるが本当なのだろうか。
やはり企業は人と組織で左右される。
究極の経営とは、実は人事なのではないだろうか。
そんなことすら本書を読んで考えてしまった。
(2021/12/21)

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感想投稿日 : 2021年12月31日
読了日 : 2021年12月21日
本棚登録日 : 2021年12月31日

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