八月の六日間

著者 :
制作 : 大武尚貴 
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年5月29日発売)
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本棚登録 : 1752
感想 : 280
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ここ最近、平日は池袋・ジュンク堂に日参しています。
その中に設置されているカフェで出会ったのがこちら。

といっても、本そのものが置いてあるわけではなく、
とある雑誌での、著者の北村さんと華恵さんの対談にて。

“年を経ていくごとに繰り返して読みたい”、
そんな風に語っておられたのがなんとも印象的で。

主人公はアラフォーの編集女子、副編集長からそろそろ長に。
役を持たない若いころは男性上司を、文字通り泣かしたことも。

基本的には不器用で、ただひたむきに仕事を積み重ねてきた、
それが故に“恋”もうまくこなせずに、未だに一人。

そんな“強い”主人公が、日常から逃れるためにいくのが“山”。
その山登りの様子が、5編からなる連作短編としてまとまっています。

徐々に責任のある立場になっていくことで、
若いころのように“自由”に仕事ができなくなるジレンマ。

それ以上に自分の思い通りになることが無い自然の中で、
その自然の美しさや一期一会の奇跡に魅入られていく主人公。

なお、山歩きの際に必ず“文庫本”を持参するとの設定が、
個人的には何とも素敵だなぁ、、と感じてしまいます。

主人公の職業柄、“本”からは離れられないのでしょうが、
ある意味そんな“仕事道具”を、非日常でどう昇華するのか。

 “ずっと本と一緒だった”

そんな風に本への想いを綴っているのは、華恵さん。
そのエッセイ集、『本を読むわたし』の中にて。

これを狙っての対談であったとすれば、私は見事にやられました。

日常と非日常をつないでくれるのが“本”、
ケでもハレでも、自身の軸を思い出させてくれる、

私にとっての本とはそんな存在なんだなと、あらためて。

久々に人生唯一のトラウマに囚われつつあった自分を、
現実に引き戻してくれた、そんな一冊でもあります、なんて。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: お仕事系
感想投稿日 : 2014年6月11日
読了日 : 2014年6月9日
本棚登録日 : 2014年6月9日

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